抄録
実在の人道吊橋を対象として,5人が電子メトロノームのアラーム音(鉛直歩調)に合わせて中央径間を約1m間隔で縦列歩行する歩行実験を行った.その結果,アラーム音を水平対称1次振動数の2倍程度(約1.70Hz)に設定すると,引き込み現象が生じて桁中央点には約1.0m/s2の最大水平応答加速度(約3.5cmの最大応答変位)が誘起された.そこで,桁の応答速度に依存する2つの水平歩行外力式を提示し,神経振動子に組み込んだ動的応答解析を実施した.解析で歩行者の初期歩調を1.70Hzと1.65Hzに設定した場合,引き込み現象が再現でき,解析値と実測値の最大応答はほぼ一致した.ただし,両者の引き込み特性には若干の差異があり,実測値では引き込み現象が生じても歩行者の歩調が揺らぐ現象が認められた.