2012 年 68 巻 4 号 p. I_186-I_194
高経年化したアーチダムを対象として微動・地震動の長期継続観測を実施中であり,2011年東北地方太平洋沖地震についても本震記録,前震,多くの余震群の観測記録が,その前後での微動記録とともに得られた.これら観測データを分析して以下の知見を得た;1)微動記録からダムの振動特性を同定し夏期から冬期にかけての変動をみてみると固有振動数はダム表面温度と相伴って低下していることが分かった.2)東北地方太平洋沖地震時にはダム天端において極めて大きい最大加速度を持つ観測記録(約630gal)が収録された.地震動継続時間は3分程にも及ぶものであった.3)本震・微動のスペクトル解析から,本震時には微動時に比して卓越振動数が著しく低下したこと,本震後微動の卓越振動数は本震前微動のそれに概ね復していることなどが分かった.