2013 年 69 巻 4 号 p. I_280-I_290
著者らは,地震動H/Vスペクトルは水平と上下の一次元波動伝達関数の比に基盤面の水平と上下の入射波スペクトルの比を乗じて計算できるとの計算法を提案している.近年,地震による地盤の揺れを拡散波動場と仮定することにより,地震動H/Vスペクトルは伝達関数の比に基盤の速度比により定まる係数を乗じて求められるとする同様な計算式が誘導された.これを契機に,著者らの計算法の伝達関数に代ってサイト増幅特性を用いる方法を改めて提案するとともに,その方法の妥当性を拡散波動場理論によるものと関連付けながら考察することとした.その際,対象は福井地域の地震観測記録とした.その結果,サイト増幅特性の比に乗じる係数として基盤の速度比により定まるものを用いれば,計算による地震動H/Vスペクトルは観測値とよく一致することが分かった.さらに,地震動H/Vスペクトルを同定・逆算して得られた地盤構造を用いて計算した一次元波動伝達関数とサイト増幅特性との対応を考察した.