抄録
既存橋梁の性能評価を行うためにその状態を考慮した数値モデルを構築し,構造信頼性を論じることが有効である.本研究では実鋼鈑桁橋を対象に,計測データからモデルパラメータの事後分布推定を行い,それを用いて構造信頼性評価を行う有効性を示した.対象橋梁の有限要素モデルを構築し,定期点検データ等に基づき設定した支承および床版のパラメータ事前分布に対して,実橋梁で取得した固有振動数からベイズ事後分布推定を行い,実際の桁腐食状態に対応して不確定性が低減された分布を得られたことを確認した.その上で,設計活荷重で主桁端部に生じる最大応力に対する降伏耐力を信頼性指標βにより評価し,最大応力分布導出に事前分布と事後分布を用いた場合での比較を行い,不確定性低減によって危険側に偏らない評価結果を得られたことを示した.