2016 年 72 巻 4 号 p. I_569-I_579
本研究では,釧路市の低平地を対象に,現地調査により避難可能構造物の選定を行い,既存構造物を利用した津波避難の可能性について,避難の条件を複数設定してその影響を検討した.積雪寒冷地における冬季の津波避難を想定したところ,歩行速度と収容人数が減少したことにより避難可能範囲が縮小した.また,早期避難と構造物の収容力の確保を想定したところ,避難時間と収容人数が増加したことにより避難可能範囲が大幅に拡大した.そこで,避難開始時間を地震直後から津波襲来の直前まで変化させたところ,カバー率の低下の傾向は地区によって異なることが分かった.避難訓練などにより避難開始時間が早まることが期待されるが,地区によっては早期避難だけでは解決できない可能性がある.