抄録
円滑な緊急輸送のため,防災拠点を相互に連絡する道路として緊急輸送道路が指定されている.しかし,災害時には緊急輸送道路の被災も想定されるが,これまでそのような検討は十分行われていない.本研究では河川氾濫による道路の冠水,地震による建物倒壊に伴う道路閉塞,両者の複合ケースを考慮した緊急輸送道路を用いた県庁と市町村役場間の到達可能性を分析した.その結果,県庁と市町村役場間の緊急輸送道路には市町村役場まで到達不能になる冠水リスクが多く存在すること,高い計測震度が予想される地域では建物倒壊による道路閉塞によって,市町村役場まで到達不能となる可能性が高いこと,複合ケースでは,冠水被害を受けなかった区間で建物倒壊に伴う道路閉塞が生じることで市町村役場まで到達不能となる可能性が高まることが明らかとなった.