抄録
PMS及びHCGを用いて牛に過排卵処置を行ない,11頭め若雌牛の卵巣濾胞から174個の卵子を得,150個について細胞学的観察を行なった。
1)発情開始直前の牛の卵巣濾胞は,14mm以上にも達するが,観察卵子33個のすべてはprophase I(diplotene)にあった。
2) 発情初期の牛の12mm以上の濾胞内卵子はすべてmetaPhase Iに,10 mm以下の濾胞内卵子はPro-phase Iに静止して居り,10-12mmのものでは両者を含む。
3) 発情後期に至れば,10mm以下の濾胞内卵子は依然としてProPhase Iにあり, prophaseI(10-12mm)の2個及び5個の退化卵子を除き,残りの25個はmetaphase I(9), anaphase I(2), telophase I(2),metaphase II(12)の種々のstageにあった。
4)第1排卵終了後の牛の110mm以上の濾胞から得られた卵子19個のうち,ProPhase Iの1個(10-12mm)を除いた残り18卵子は, prometaphase Iからmetaphase IIに至るすべてのstageにあった。
5)卵子の退化は発情後期の大濾胞により多くおこる。
6)以上の結果は,過排卵々子の成熟は無処置牛の場合と同様の進行過程において行なわるるが,卵子個々の成熟速度に相当の遅速があることを示した。