抄録
本研究ではNaClによる高腐食性環境におけるAl-5Mg合金溶射と塗装の取合部の耐食・防食特性を明らかにするために,線・帯状の鋼素地露出部を導入した溶射皮膜と塗膜の重ね部あるいは突合せ部を有する鋼板試験体の複合サイクル腐食促進試験を行った.また,塗膜の交流インピーダンス測定やEPMAによる元素分析なども実施した.これらの結果から,Al-5Mg合金溶射と重防食塗装の重ね部における鋼素地露出部からの溶射皮膜の劣化は,溶射皮膜のみの場合に比して早期に発生・進行すること,また,溶射皮膜が鋼素地露出端部から劣化・剥離した後に,溶射皮膜による犠牲陽極作用と酸化物の皮膜保護性による防食性能が著しく低下することを明らかにした.さらに,鋼素地露出幅が増加するほど,溶射皮膜が早期に劣化し,防食性能が低下することなどを示した.