抄録
本研究は,地震により座屈損傷を受けた円形鋼製橋脚の効率的な応急復旧を目的として,炭素繊維シート巻立てによる性能回復を小型試験体を用いて,実験的に検討したものである.試験体は,無補強のケースに加え,予め7層の炭素繊維シートを巻き立てた補強,座屈損傷後に7層の炭素繊維シートを巻き立てた補修の3ケースを用意した.鉛直荷重を一定として,水平方向に漸増繰り返し荷重を載荷して,水平耐力,エネルギー吸収率を比較した.その結果,損傷前の補強では,無補強に対して,水平耐力の増加は小さいが,エネルギー吸収率は約2割増加することがわかった.損傷後の補修では,炭素繊維シート巻立てにより,水平耐力,エネルギー吸収率の向上は見られなかったものの,水平耐力は損傷前の90~95%まで回復することが確かめられた.