抄録
構造物の減衰特性は,計測事例が少なく,発生要因が複雑であるため,いまだ不確定性が高い.しかし,近年,減衰定数の小さな鉄道構造物が地震時に共振現象によって大きく応答し,それが車両の脱線の原因のひとつとなった可能性も指摘されており,より精度の高い耐震性能評価や車両の走行安全性の評価を行う上では,減衰定数の評価方法の確立が重要となる.そこで本研究では,衝撃振動試験および常時微動測定を構造形式や地盤条件の異なる多数の鉄道高架橋で実施し,減衰定数の概略評価を試みた.その結果,構造物と自然地盤の周期比と減衰定数に相関があることを見出した.また,それを踏まえて,車両の走行安全性の観点から相対的に注意を要する低減衰箇所を簡易に抽出する手法を提案した.