2020 年 76 巻 5 号 p. II_38-II_49
腐食損傷した鋼部材に軽量かつ強度の高い炭素繊維強化樹脂(CFRP)を接着して補修・補強する工法が適用され始めている.2018年には,土木学会複合構造委員会から「FRP接着による構造物の補修・補強指針(案)」が発行され,エネルギー解放率を用いたはく離の照査方法が記載された.一方,CFRP接着補修・補強において,はく離荷重を上昇させる方法の一つに段差を設けてCFRPを積層接着する工法が提案されている.しかし,必要段差長を満たしていない場合のエネルギー解放率の算出方法や任意の段差位置におけるエネルギー解放率の算出方法は明らかにされていない.本研究では,任意の長さの段差を設けてCFRPが積層された一軸引張を受けるCFRP接着鋼板に対して,はく離の照査に用いるエネルギー解放率の算出方法を明らかにした.