2022 年 78 巻 2 号 p. 203-212
因果性を有する地震動加速度時刻歴のフーリエ変換の虚数部は,ヒルベルト変換を用いて実数部から再現できる.この事実を用いて,加速度時刻歴を模擬する方法論を開発する.まず,実数部の二乗平方根の角振動数に関する変動特性を抽出し,実数部の「平均変動過程」とする.平均変動過程で実数部を除したものを「標準化実数部過程」と名付け,これが定常な確率過程となることを確認し,その確率特性を抽出する.さらに,標準化実数部のサンプル過程を自己回帰過程として模擬する.その不確定性は自己回帰過程の予測誤差として評価される.次に,模擬されたサンプル標準化実数部過程に平均変動過程を乗じて,サンプル実数部過程を求め,この実数部過程から,ヒルベルト変換で虚数部過程を計算し,フーリエ逆変換で因果性を有する加速度時刻歴を模擬する.