抄録
本研究では,水害に関する知識の実態を把握した上で,転入者の知識取得と家屋被害との関係を検討し,家屋対策を判断する際に役立つ知識を見出すことを目的とした.まず,自治会長へのヒアリング調査の結果,堤防や洗堰など河川構造物の存在,土地の高低や河川の狭窄部など地形の知識,過去の破堤地点など災害史の知識を有していた.次に,これらの知識の質と量に着目し,転入者の知識取得と家屋被害との関係についてクロス集計と数量化III類を用いて検討した.その結果,取得知識数が多いほど,また,内容では河川構造物の存在及び地形の知識の両方を有することが,家屋被害の軽減につながることを示唆した.