抄録
近年鉄道駅において,ホームからの転落事故や列車との接触事故が多発しており,利用者の安全確保が喫緊の課題となっている.このような状況を受け,国土交通省は2011年8月にホームドア等の整備促進に関する基本方針を定めており,今後はこれらの施策の事業評価において,利用者の安全性向上効果を計測する必要性が高まると考えられる.そこで本研究では,鉄道駅へのホームドア設置による安全性向上便益について,仮想的市場評価法を用いて計測を試みた.具体的には,東京圏の鉄道利用者を対象にWebアンケート調査を実施し,ホームの安全に対する意識を把握するとともに,ホームドア設置による価値について,提示額に対する賛否を二段階二項選択方式で尋ねた.これらの回答を基に,ロジットモデルを用いて支払意思額を推定し,これに受益者数を乗じることで便益を計測した.