抄録
発電プラントの建設は,基礎工事,プラント設備工事など多種多様な工事を土木,電気など異なる工学分野の技術者が,構造物の設計条件について,連携しながら実施する総合的な建設プロジェクトである.しかし,設計条件に関する情報共有や意見交換による連携が十分でない場合,総合的に取り組むメリットが発揮されず,建設プロジェクトとしては不十分なものとなる.その結果,建設プロジェクトのイニシャルコスト及びランニングコストを含めたトータルコストが増加したり,事故の発生要因となることとなる.
従来の研究は,プラント設備工事,基礎工事等個々の工事の安全管理やリスクに関するものが多かった.本稿では,これら個別の工事が相互に連携する規模の大きい発電プラント建設を例に,建設プロジェクトのリスク管理の観点から,(1)「建設プロジェクトの発注方式の課題と対応策」,(2)「実際に起きた変電所基礎変位事故」において,設計条件連携の重要性を検証すると共に,(3)「建設プロジェクト発注機関が実施する工事範囲とリスクコントロール」において,リスクの変化について検討を行い,これら全体を通して建設プロジェクトの設計プロセスにおける課題と対策について述べる.