土木学会論文集F6(安全問題)
Online ISSN : 2185-6621
ISSN-L : 2185-6621
71 巻 , 2 号
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特集号(招待論文)
  • 豊澤 康男, 大幢 勝利, 吉川 直孝
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1-I_12
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     「リスクアセスメントの努力義務化」が,平成18年の改正労働安全衛生法の施行で明確にされ,建設業においても導入が進んでいる.しかしながら,最近,災害発生数の減少傾向にかげりが見られるのが現状である.国際的に見ると日本は労働災害の少ない国であるが,例えば,建設労働者10万人当たりの死亡災害数で比較すると,日本は英国の約3倍の災害が発生している.なぜ,日本では「リスクアセスメントの努力義務化」などの効果が顕著に見られていないのか?本研究では,英国での建設安全衛生関係者からの聞き取り調査等に基づき,英国と日本との建設工事の実態,リスクマネジメントを含む法体系や制度等の違いを明らかにし,日本における建設工事の安全衛生等の今後の方向について検討した.
特集号(和文論文)
  • 長谷川 幸彦, 川本 篤志, 坂田 朗夫, 佐藤 英治, 伊藤 則夫, 白木 渡
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,主要施設の機能不全,社会基盤施設の壊滅的被害等想定を超える事態が発生した.その結果,住民の生命,財産,生活を守るべき基礎自治体(市町村)がその機能を発揮できず,住民が長期間にわたって過酷な避難生活を強いられることになった.これを受けて,内閣府から行政機関とくに市町村に対して想定を超える事態においても重要機能を発揮できるBCPの策定・見直しを行うように指示が出された.しかし,被災地域が広範囲にわたる大規模災害では,行政による支援・救援が遅れ,空白期間が長期化することは避けられない.このような状況においては,住民個々の力でまた住民同士の助け合の力で当面を凌ぎ公助を待つ必要がある.
     本研究では,地域コミュニティに着目し,住民の個々の力並びに住民同士の共助の力をレジリエンス・エンジニアリングの4つの能力(対処能力,注意能力,予見能力,学習能力)として捉え,それらをアンケートにより評価する手法を提案する.そしてさまざま地域でアンケートを実施し,評価手法の有効性を検証するとともに地域間の防災意識の違いについて考察し,意識向上図る対策を提案する.
  • 保田 敬一, 白木 渡, 井面 仁志
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_19-I_26
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     長寿命化修繕計画においては,例えば大規模広域災害が発生した場合,異常時点検を実施するというルーチンは明記されてはいるものの,修繕計画には「頑健性」や「冗長性」,「即応性」などのレジリエンス特性と呼ばれる回復性を評価する指標が考慮されていない.行政機関などではレジリエンスを考慮したBCP策定の取り組みや,レジリエンスを考慮した道路網の信頼性解析に基づく地震対策の評価など,レジリエンスの考え方を取り入れた研究が昨今検討されてきている.本研究では,大規模広域災害におけるレジリエンス能力として,「対処能力」,「注意能力」,「学習能力」,「予見能力」の4つの観点から,策定されている長寿命化修繕計画を評価することを試みる.
  • 有友 春樹, 井面 仁志, 白木 渡
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_27-I_32
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以降,施設・設備の被災を前提として,なんとしても命を守る防災・減災対策に主眼が置かれるようになった.その対応方法としてレジリエンスエンジニアリングの考え方が注目されている.この考え方では,災害の事前,事中,事後の各段階で「予見能力」,「注意能力」,「対処能力」,「学習能力」を備えたレジリエントな対応が求められており,このレジリエントな対応を事前に学ぶことにより,迅速かつ適切な災害対応ができるとしている.
     レジリエントな対応を事前に検討し,学習するツールの1つとして,被災状況および避難状況のシミュレーション等があげられる.これまでも災害時の被災状況等をイメージするためにシミュレーションにより,被災状況,避難行動等が可視化され,防災教育に活用されてきた.しかし,それらは地域住民が自身で簡単に利用する事が出来ず,想定外の事態を議論することまで活用されていない.そこで本研究では,レジリエントな対応の考え方に基づき,想定外の事態の議論を行うツールとして,シミュレーション途中で議論しながらシミュレーション状況を変更できる参加型避難シミュレーションの活用を検討する.
  • 中久保 豊彦, 東海 明宏
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_33-I_40
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,ライフライン分野におけるレジリエンスの定量評価手法をレビューし,その類型化を試みた.まず,レジリエンスの対策戦略として,回復・適応も含む対策戦略,ハザード未特定事象への対策戦略を類型の軸として,前者を外力応答評価,後者を網羅性評価と分類した.さらに,主体(供給部門側,需要部門またはコミュニティ側)の観点を補助的な類型の軸とした.以上に基づき,定量評価手法を外力に対するライフライン機能の応答評価,ライフライン機能の停止に対する耐性評価,ライフラインレジリエンスの網羅性評価,コミュニティレジリエンスの網羅性評価の4つに分類した.既報における各手法の設計,適用の事例をとりまとめ,その特徴を考察するとともに,社会実装に向けた課題を整理した.
  • 永田 尚人, 加藤 猛士
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_41-I_46
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     国内外の経済情勢の急激な悪化に伴い,国内産業の根幹をなす中小企業は,需要の低下と資金繰りの厳しさに直面している.平常時の操業さえも困難な経済状況において大規模な災害が発生すると,被害を受ける中小企業には,事業再開に困難を伴ったり,自力で操業を再開することが困難な事例が相当数発生するものと想定される.このため,災害時における中小企業の事業継続に向けた対策が重要な課題となる.
     筆者らは,中小企業が災害時における事業継続への対策に取り組めない理由や課題に関する仮説を設定し,これらの企業群が事業継続性を高められる仕組みとその構築プロセスを提案してきた.
     本研究では,提案してきた仕組みと構築プロセスが,東日本大震災によりどのような影響を受けてきたのかについてヒアリング調査等を基に検討し,今後の事業継続における地域連携のあり方を考察する.
  • 金井 純子, 湯浅 恭史, 中野 晋, 渡辺 一也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_47-I_54
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,過去に被災した施設の事例から,要配慮者利用施設のタイムラインの設定を試みた.調査方法は,近年の豪雨で被災した5施設を対象に聞き取りを行うと共に,水位計データ等から浸水状況を明らかにした.避難行動と浸水状況を整理し「いつ」に注目して課題検証した.2014年台風11号による那賀川の氾濫で浸水した特養S荘を対象に上流部の川口ダム放流量と水位計データからS荘付近の水位変化の相関関係を分析結果,ダムの放流情報が行動開始の目安になることが分かった.また,S荘と支援機の関係を整理し,事業継続におけるタイムラインの共有化の必要性を示した.
  • 小野 憲司, 皆川 幸弘, 海野 敦, 赤倉 康寛
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_55-I_62
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     平成25年12月4日に制定された国土強靱化基本法の下で,日本の主な港湾において事業継続計画(港湾BCP)を策定することが決定され,各地の港湾でBCPの策定作業が進められている.一方,BCPに関する国際規格であるISO22301では,BCP策定に際してビジネスインパクト分析及びリスク評価を行うことを求めており,港湾物流に携わる実務家がこれらの分析作業を円滑に行うための手法の整備が急務となっている.本研究では,港湾物流に含まれる様々な業務活動を系統的に分類し,必要資源の抽出や隘路分析を行うための分析支援ツールを開発することによって,現場の実務家にとっても判り易く簡便なBCP作成手法の提供を目指す.
  • 磯打 千雅子, 高橋 亨輔, 井面 仁志, 岩原 廣彦, 白木 渡
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_63-I_68
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)は,組織の機能停止を想定し,重要業務に優先度を付加して事業サービス継続のための対策を立案するものである.この計画づくりを含めたPDCA活動を事業継続マネジメント(Business Continuity Management : BCM)といい,組織づくりの手法として用いられている.組織はBCM活動を通じて組織力を強化し,社会の多様な変化に対応できる事業継続力を向上させる.この活動の主目的は,組織が有する設備等の充実もさることながら,組織構成員の人づくりにある.
     本研究では,BCMの担い手に必要なコンピテンシーを明らかにし,対応力向上を支援する3D-VRシミュレーターを用いた仮想空間体験型訓練シナリオを開発する.
  • 岩原 廣彦, 白木 渡, 井面 仁志, 長谷川 修一
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_69-I_76
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     発電プラントの建設は,基礎工事,プラント設備工事など多種多様な工事を土木,電気など異なる工学分野の技術者が,構造物の設計条件について,連携しながら実施する総合的な建設プロジェクトである.しかし,設計条件に関する情報共有や意見交換による連携が十分でない場合,総合的に取り組むメリットが発揮されず,建設プロジェクトとしては不十分なものとなる.その結果,建設プロジェクトのイニシャルコスト及びランニングコストを含めたトータルコストが増加したり,事故の発生要因となることとなる.
     従来の研究は,プラント設備工事,基礎工事等個々の工事の安全管理やリスクに関するものが多かった.本稿では,これら個別の工事が相互に連携する規模の大きい発電プラント建設を例に,建設プロジェクトのリスク管理の観点から,(1)「建設プロジェクトの発注方式の課題と対応策」,(2)「実際に起きた変電所基礎変位事故」において,設計条件連携の重要性を検証すると共に,(3)「建設プロジェクト発注機関が実施する工事範囲とリスクコントロール」において,リスクの変化について検討を行い,これら全体を通して建設プロジェクトの設計プロセスにおける課題と対策について述べる.
  • 広兼 道幸, 上條 健太, 伴場 翔
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_77-I_82
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     全産業の中で死亡事故が最も多いのは建設業であるといわれており,効果的な安全教育の確立が望まれている.その中で,工事現場で実際に鋼材などが落ちた場合や作業員が転落した場合を想定した体験型の安全教育など,様々な工夫が取り入れられている.しかし,注意力欠如や危険軽視,慣れなどに起因する不安全行動による事故が後を絶たない.そこで本研究では,作業員の仕事に対する集中力に着目し,非集中時に起こりやすい不安全行動を,簡易デバイスを用いてモニタリングする仕組みを検討した.具体的には,脈拍計付き腕時計を装着した状態で作業を実施し,脈拍の時系列データをリアルタイムに取得した.取得したデータから積分値や差分値などの特徴量を計算し,その値を基に,作業に対する集中力と脈拍との関係性について検証し,集中していない時の脈拍パターンのモニタリング手法を検討した.
  • 堀 智仁, 玉手 聡
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_83-I_88
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     基礎工事用建設機械のような大型建設機械の転倒災害を調査すると,敷鉄板の端部に履帯が位置した際に大きな沈下が生じて転倒に至った事例が多く見受けられる.このような機械の安定設置に関する検討では,敷鉄板の敷設による接地圧の低減が考慮されている.しかし,履帯が敷鉄板の端部に位置した場合の接地圧増加についてはあまり考慮されていないのが現状である.建設機械は現場内を移動するため,敷鉄板の端部に機械が位置した状態でも支持されるか確かめる必要がある.本研究では,敷鉄板の敷き方と荷重分散の関係について実験的な解析を行った.その結果,敷鉄板を重ね敷きする場合,その重ね方によって荷重の分散効果が異なることが明らかになった.
  • 山田 貴久, 北村 正純
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_89-I_96
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     リスクアセスメント教育は,公共機関をはじめ多くの企業で実施されている.一方,厚生労働省の統計によれば,総合工事業において「災害が発生していないため」,「法令を守っていれば十分なため」にリスクアセスメントを実施しても意味がないと考える傾向が2005年(平成17年)から2013年(平成25年)にかけて(調査は前年に実施)増加傾向にあることが分かった.リスクアセスメントは,危険個所や危険作業を特定するとともに,その危険性の度合いと災害発生の可能性を数値化し評価することで改善の優先度を定め,見える化を行い,関係者全員がリスク低減に関して考える機会を持つことができる有効な対策であると考えられる.そこで,リスクアセスメント教育の質を向上させるためにどのような対策を実施すれば良いか2011年から2014年にかけて実務を通して検討した.特に,各部所のリスクアセスメント推進員は重要な役割を果たしている.
  • 二神 透, 國方 祐希
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_97-I_104
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     木造密集市街地では,地震火災対策が喫緊の課題となっているが,どのように危険でどのような対策が目に見える形で有効なのかがイメージし難いため,ソフト,ハードの両側面の対策が遅れている.
     そこで,地震火災の延焼リスクのみならず,避難場所の火災熱リスク分析システムならびに,防火樹木の効果を組み込んだシミュレーション・システムを開発する.そして,開発したシステムを,地区防災計画における減災計画に位置付け,松山市の立花地区を対象に,既存の避難場所の安全性について検討するとともに防火樹木による避難場所の安全性の確保について報告する.
  • 池田 一, 吉田 真也, 安養寺 信夫
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_105-I_110
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     火山噴火に対する危機管理の意思決定を行うにあたり,最も困難な側面のひとつは火山観測データの解釈である.火山観測データに応じて,火山噴火の危険性を定量的に評価することが可能となれば,火山噴火時の危機管理の意思決定を支援する重要な情報となる.
     本研究では,火山噴火の危険性について,火山観測データを噴火確率として定量的に評価した.具体的には,御嶽山の2014年危機を対象として,火山観測データのうち火山性地震と火山性微動の発生回数のデータを用いて,ベイズ推定により,時々刻々と変化する噴火確率を推定し,火山噴火の危険性を定量的に評価できることを示した.
  • 宇野 宏司, 布浦 博之
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_111-I_116
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     大阪湾沿いを走る鉄道のうち,南海トラフ地震で大きな被害が出ると予想される南海電鉄の本線と支線(高師浜線)を対象に将来の大規模広域災害発生時に備えた「安全あんしんマップ」の作成を試みた.まず,現地踏査によって,安全あんしんマップの対象とする地域を選定し,安全あんしんマップに記載するコンテンツのスクリーニングを行うための事前アンケートを実施した.その結果を踏まえ,地理情報システムを用いて「安全あんしんマップ」を作成した.これを同対象地域に再配布するとともに事後アンケートによって,改善事項を抽出した.作成された「安全あんしんマップ」は,読みやすさや情報の充実度について課題を残しているものの,大規模広域災害の発生時には携帯電話やスマートフォンが使えない可能性も高く,紙媒体でのこうした情報提供ツールの必要性は依然と高いことが明らかにされた.
  • 岩原 廣彦, 白木 渡, 井面 仁志, 高橋 亨輔, 磯打 千雅子
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_117-I_124
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     わが国の少子・高齢化の問題は深刻であり,特に地方ではその進展が早く,四国地方においては,全国平均に比べて約10年早く進行している.地方都市は衰退し,シャッター商店街や空き家の増加は,防犯面や災害発生時の不安要因となっている.このような状況のなか,地方商店街の再生成功モデルとして全国から注目されている高松丸亀商店街がある.この街の特徴は,商店街と住居エリア(定期借地権付分譲マンション)が一体化したものであり,高齢者や障害者にやさしく,就業・文化活動・買い物・病院通いなどにも便利なコンパクトシティである.一方,四国地方は,近い将来発生が予想される南海トラフ巨大地震により,甚大な被害が想定されており,都市再生においては防災力の保有が重要となる.
     本稿では,地方都市再生成功先進モデルと評価されているこの事例が,防災の観点からどれだけの防災力を持っているかを評価し,政府が進める地方創生や,国土強靱化の基本理念に基づく市町村国土強靱化計画のモデルとしての展開が可能かについて検討した結果を述べる.
  • 嶋田 宏, 中野 晋, 村田 進, 丹羽 竜也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_125-I_130
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     ミャンマー沿岸部では2008年5月に深刻な高潮被害を受け,約14万人の犠牲者を出した.これを受け沿岸部デルタ地帯の高潮被害を軽減するため,JICAによる自然災害早期警報システム構築プロジェクト1)(JICAプロジェクト)が実施されている.広範囲で入り組んだ沿岸各地に精度の高い高潮警報を住民に伝えるためには,ミャンマー国(麺国)の技術者が自立的に各地の潮位特性を分析できる技術を身につけることが重要である.筆者らはリボンテープを用いた簡易潮位計を用い短期間の観測から潮位推算を行ない,これらの手法を防災安全教育の一環として麺国の実情に合わせた継続的な展開が可能な基礎的観測技術の移転を行った.
  • 羅 貞一, 楊 勇, 福山 敬, 松見 吉晴
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_131-I_138
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     地域防災力の向上には,自助・共助・公助を相互補完的に組み合わせた戦略が不可欠な要素である.特に自助・共助では,個人や地域コミュニティが自発的に参画しながら,地域の特性を反映した実現可能な行動計画や連携の仕組みづくりが必要である.著者らは,住民による行動計画づくりのための支援手法の一つとして,住民と防災専門家が協働するワークショップ形式の四面会議システム手法を応用してきた.この参加型手法は,「SWOT分析」,「四面会議図」,「協働ディベート」,「行動計画書」で構成されている.本稿は,韓国中山間地域コミュニティの復興計画づくりへ四面会議システムを適用した研究事例である.本システム検証として,「四面会議図」と「ディベート」のアクティビティから策定される「行動計画案の要素」にISM法を用いて行動計画案の構造化を行った結果,行動計画案項目の間では多くの順序関係を持つ中核行動計画要素が存在することを明らかにした.
  • 中野 晋, 鳥庭 康代, 三上 卓, 武藤 裕則
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_139-I_146
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     2014年8月に相次いで来襲した台風12号と同11号では高知県と徳島県では8月1日から10日の間に多いところで2000mmを超える降雨量を記録し,各地で河川氾濫や内水被害が頻発した.その結果,両県で複数の小中学校や保育所で床上浸水被害や浸水に伴う断水が発生し,早期復旧に向けた対応が行われた.近年,教育機関や保育所が浸水被害を受ける事例が頻発しており,これらの施設での豪雨時の避難確保計画の作成や早期に復旧するための対策の実施が必要となっている.そこで,両県で被災した学校と保育所の被災実態についてインタビュー調査を実施し,各施設での被害の特徴と応急対応について検討した.
  • 広兼 道幸, 西脇 一昭, 松岡 隼平
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_147-I_152
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     車や航空機などに代表される交通安全の分野では,事故を回避するための教育として,事故に結び付くシナリオを想定したCGやシミュレータを用いた危険予知訓練が積極的に実施されている.このように危険への感受性を向上させるための教育は,疑似体験が効果的とされている.そこで本研究では,過去発生した気象災害発生前後の一連の降雨パターンを拡張現実感によって再現できるシミュレータを開発した.さらに,開発したシミュレータにより災害時の降雨を視聴すると同時に,実際に被害が発生したタイミングと被害状況を対応させていくことにより,より早い段階での避難行動がとれるような防災教育の仕組みを提案した.さらに,高槻市主催の防災訓練において,市民を対象に提案した防災教育の仕組みを実践し,危険への感受性と避難行動の関係を,人間認知信頼性モデル(HCR;Human Cognitive Reliability)を用いて検証した.
  • 二神 透, 井出 皓介, 今西 桃子
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_153-I_160
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     地域防災力を高めるためには,地区防災計画の推進と地区内の学校防災,すなわち,防災教育の推進が両輪となる.本研究では,愛媛県松山市の垣生小学校の高学年を対象とし,シミュレータを用いた防災教育を実施した.その結果,地震火災延焼シミュレータのみと,それらから避難するシミュレータを操作したグループで意識変化に差があることを示すことができた.しかし,その後,2か月シミュレータを使わなければ,意識が低下することと同時に,継続的な防災教育が必要であることを示唆することができた.
  • 小池 則満, 服部 亜由未, 森田 匡俊
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_161-I_168
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以降,防災教育が各地で盛んに実践されている.防災教育の内容が児童から家庭へ,さらに地域へ波及する過程について継続的な調査による検証が求められる.本研究では活動への参画とアンケート調査によって,小学校における防災教育活動を地域に展開するための要点や課題について考察した.その結果,防災教育活動を地域に展開する地域役員が初期の段階から関わること,WebGISによる学習支援や住民意識調査などを通じた大学やNPOによる支援,大学・NPOと地域が防災教育の場を通じて情報共有できたこと,などが要点であると指摘できた.
  • 中村 栄治, 小池 則満
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_169-I_176
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     能動的な避難行動要素を含んだ避難訓練の実現を目的として,チェックポイントを通過した訓練参加者に対して,チェックポイントからどの方向に避難したらよいかをスマートフォンにより指示する実験を行った.75名の学生が実験に参加し,3000名を超える学生と教職員が参加した全学避難訓練の一部として実施した.チェックポイント通過をシステムに申請した実験参加者のみに,チェックポイントごとに避難経路指示した.近隣に建物倒壊や火災の可能性があるようなチェックポイントでは,複数の避難路がランダムに指示されるように設定した.参加者へのアンケートでは,86%がスマートフォン画面の操作は簡単であり,87%がシステムからの指示に正しく従って避難できたと答えた.
  • 徳永 雅彦, 中野 晋, 武藤 裕則, 佐藤 塁
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_177-I_184
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     浸水被害をハード整備で防ぐには膨大な時間と経費を要するため,整備途上でも被害の最小化を図るソフト対策の充実が喫緊の課題である.本研究は2014年8月に那賀町で発生した水害時の行政と住民の対応を検証する.また,過去の那賀川における出水状況を踏まえ,はん濫発生と水位や上流のダムからの放流量の相関関係等を検証するとともに,行政が発信する災害関連情報の種類や伝達方法,住民の避難完了までに必要な時間等も検討する.その結果,住民の避難等が適正に実施されるよう,災害発生前の行政や住民の対応を時系列に沿って「いつ,だれが,何をする」を明確にした「防災行動計画」を提案する.
  • 湯浅 恭史, 中野 晋, 山城 新吾, 蔭岡 弘知, 多田 雄一, 村上 佳代子, 鳥庭 康代
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_185-I_190
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,多くの学校等が地震や津波の被害に遭い,多くの学生等が犠牲となった.中でも,幼稚園児は自主的に避難行動を起こすなどの判断が難しく,職員による支援が必要であるが,抜本的な対策が進んでいない現状にある.
     本研究では,東日本大震災での幼稚園の被災事例から課題を抽出し,これらの課題に対応するため,災害時アクションカードを活用した訓練手法による幼稚園での津波避難行動の高度化を検討した.具体的には,ミッションを明確にし,具体的な対応手順を検討し,災害時アクションカードを作成する.それを訓練で使用し,課題や改善点を抽出する.抽出された課題や改善点を次回訓練までに修正し,反映するという,訓練を中心としたPDCAサイクルを南海トラフ地震での津波被害が想定されている松茂町立K幼稚園で実践し,訓練手法の検証を行った.
     この取り組みにより,津波避難行動の高度化が図られたとともに,職員の防災意識の向上,園児の初動行動への対応が向上するなど,一定の成果を挙げている.
  • 皆川 勝, 中村 遼太, 高橋 翔天
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_191-I_198
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東日本大震災では,多くの人的被害が生まれた.なかでも、発生頻度のまれな津波からの避難に際して,人間の心理要因がマイナスに働いて被害が拡大した事例が存在する.これまで災害心理学の観点かこの問題に関する研究は行われてきたものの、本問題に対して個々人の心理要因を土木技術の視点から分析した研究は見当たらない.そこで、本研究では、特に被害規模が大きく社会的関心をとらえた課題について、具体事例における関係者の行動を社会心理学的観点から分析し,人間の根源的本能や欲求を著者らの集団・達成・自律という3つの志向性に基づいて考察した.
  • 金子 雄一郎, 佐野 在人, 室井 寿明
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     本研究は東京圏を対象に,大震災が発生した場合の鉄道代替バスの輸送に関する検討を行ったものである.1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では鉄道施設が甚大な被害を受けたため,発災1週間後から160日間にわたりバスによる代替輸送が実施され,一定の通勤・通学等の需要に応えた.東京圏の場合,鉄道の輸送需要が高く代替輸送も大規模とならざるを得ないことから,平常時から大量のバスの調達方法,バスの発着場や操車場(一時的な車庫)の候補地の選定,提供可能な輸送力の把握等を行っておく必要がある.本研究では東京圏を対象に,鉄道代替バスの操車場の候補となり得る施設を抽出した上で,ケーススタディとして,複数の区間を対象に代替バスを運行した場合の輸送力を試算するとともに,輸送力に及ぼす影響要因について感度分析を行った.
  • 坂東 淳, 町田 千尋
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_205-I_212
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     近年多発する豪雨災害や,対策が急がれる南海トラフ巨大地震,首都直下地震などの大規模災害に備え,多くの自治体では,ICTを活用した防災情報共有システムの構築・運用が進められている.しかしながら,これらの情報集約・伝達等に関する取組は,組織内における改善には寄与しているものの,他機関との横断的な流通・活用までには至っていない.本研究では,自治体における防災部門と医療部門の情報システムについて,それぞれの収載項目の分析を通じ,業務における位置づけの現状を明らかにすると共に,他機関との横断的な情報流通・活用を実現するための課題を抽出し,両部門の情報共有の解決策を提示する.
  • 金井 純子, 照本 清峰, 中野 晋
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_213-I_219
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/01/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,地方自治体職員の災害発生後の問題と事前からの計画策定の必要性に関する認識とそれらの関連性を把握すること,そこから自然災害に関する対応計画を作成する際の防災担当部署以外の職員との協力体制のあり方を検討することを目的とする.調査対象地域は徳島県鳴門市である。分析においては、「災害発生後の応急期に被災地域に生じる問題」,「事前から計画を策定しておくべき災害対応の重要業務」に関するそれぞれの認識とそれらの関係性について検討した.分析結果より,自治体職員の災害対応業務に関する認識の傾向を明らかにするとともに,それらを踏まえた災害対応計画を策定する上での課題について考察した.
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