抄録
本研究は,海岸観光地における市街地形成過程と津波災害への脆弱性との関連について明らかにした.本研究では,明治時代から海水浴場として栄えた愛知県南知多町内海地区を対象地域とする.まず,明治期から平成26年現在までの地形図から土地利用のGISデータを作成し,前後の土地利用変化から市街地形成過程を整理した.さらに,これらの土地利用データと津波浸水想定区域や都市計画図とのクロス集計を行い,市街地形成過程と津波災害への脆弱性について分析した.内海地域は,南知多町でも少ない平坦地を有していることから農業地域として成立してきた.その平坦地が海水浴場としての観光地化と合わせて,農地から住宅地へと変容した.そのため,津波浸水想定地域に住居地域が多く含まれ,高層の建物がなく,区画や道路が狭いといった水平避難や垂直避難が困難な地域が成立した.今後は,浸水被害に対応できるようなまちづくりが求められる.