抄録
大規模震災の発生時には,救助・救急,医療,物資補給等の応急対応のほか,家族・親族等の安否確認や業務の支援,ボランティア等を目的とした広域的な移動が発生するが,交通対策上重要となる流動量や移動手段などの実態は明らかになっていない.本研究では2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」を対象に,交通ビッグデータであるモバイル空間統計を活用することで,震災発生後の地域間移動の特性を分析するとともに,高速道路や新幹線,航空等の広域交通機能の回復状況や各種機関による災害派遣等との関係を考察した.その上で被災地への訪問者を対象にWebによる回顧式調査を実施し,訪問期間や訪問目的,利用交通機関,職業等の詳細な実態を把握した.以上の結果を基に,災害時対応としての早期の幹線交通機能の回復の重要性について言及した.