抄録
山岳トンネルの地震被害メカニズムを理解するための基礎として,調和振動の平面波がトンネル軸に対して斜めに入射した場合の円形トンネルの変形挙動を3次元弾性波動論に基づいて解析した.地震波で想定される周波数範囲では,トンネル横断方向の挙動は地盤と覆工の相対的な剛性の比で決まり,入射波の波長の影響をほとんど受けないが,トンネル縦断方向の挙動は剛性比に加え,入射波のトンネル軸方向に生じる見かけの波長の影響を受ける.そのため,トンネル横断面内に変位成分を持つS波だけでなく,トンネル軸を含む縦断面内に変位成分を持つS波でも被害が生じる可能性があることが明らかとなった.また,実際の被害においてもトンネル軸を含む縦断面内に変位成分を持つS波が被害要因の一つと考えられる事例のあることが確認された.