2016 年 72 巻 3 号 p. I_74-I_86
ひびわれが観察されたトンネル覆工の補修を合理的に行う上では,覆工のひびわれの原因を特定することが重要である.筆者らは,このための手掛かりとして,レーザスキャニングによる覆工の形状計測結果を用いることを試みた.矢板工法で建設され,外力の影響を受けていないと考えられるトンネルを対象とし,精度の向上を図った移動体型の計測システムを用いてレーザスキャニングを実施した.得られた3次元点群データより,独自の方法により覆工上半部の曲率半径を測定した.この結果,組立式型枠が設置された各スパンに共通する特徴的な曲率半径の分布を認めた.このような覆工形状の分布が見られる場合は,これが外力による覆工の変形によってもたらされるとは考えにくいことから,覆工に生じているひびわれが,覆工コンクリートの硬化過程の変形など外力以外に起因するものであると判断できる.