2020 年 76 巻 1 号 p. 79-84
我が国の高度経済成長期に集中的に整備された社会インフラはすでに建設後30~50年以上経過し,今後その老朽化が急激に進行する.このため,道路トンネルを管理する事業者は,独自にトンネル長寿命化計画を策定している.著者らは,トンネル維持管理計画に資する覆工の定量的な健全度評価法の確立を目指して,過去に複数回実施された覆工点検記録にひびわれ指数(TCI)を適用し,その経年変化を分析してきた.しかし,これまでの分析では覆工の健全性低下を示すTCIの増加がひびわれの幅と長さのいずれに起因するかを区別しておらず,詳細なひびわれの進行度を把握できない問題点があった.そこで,本ノートでは,TCIの基礎式から,増加量に対するひびわれ幅および長さそれぞれの寄与度を分離する方法を提案し,覆工劣化の経年的な進行性評価を試みた.