2022 年 78 巻 1 号 p. 1-8
近年,都市で発生している水害では河川から溢れた氾濫水が都市部の低地や地下空間に浸入し,甚大な人的被害が生じている.これまで地下空間での避難対策については,浸水シミュレーションを駆使した多くの既往研究がみられ様々な場で報告がなされている.しかしながら,これらの研究は1人で流水に向かって上流向きに歩行して避難する状況を対象としているため,多人数で避難したり,流水を垂直に横切って避難するときの危険性を考慮していない.本研究では人型模型を用いて流水中の人体に掛かる力を通路幅,人数,人間の身体の向き,姿勢を変化させて計測し,特に狭い地下通路内での浸水時の水難事故の危険性について調べた.さらに実験データをもとに避難限界指標となる危険流速―水深判読図を作成し,横断避難時の転倒危険性,転倒したときの流される危険性を評価した.