2022 年 78 巻 1 号 p. 51-61
身体動作をともなう自己のアバタの操作を可能とするVRシステムを用いて,地下街で生じた火災に遭遇した際の人の行動特性を明らかにする.実験 1ではVR空間上の煙中での避難口誘導灯の視認性が現実空間のそれと同程度となるように,避難口誘導灯までの距離を変化させ,避難口誘導灯が視認できるよう研究対象者が煙の濃度を調整した.実験 2では実験 1の結果を踏まえてVR空間上に再現された火災が発生した地下街で研究対象者がとる行動を計測した.その結果,研究対象者の多くは最寄りの出口から避難したが,幾人かは離れた遠くの出口から避難した.これらは研究対象者の避難口誘導灯の使い方や,人が空間的行動をおこなう上で予期せぬ事態に遭遇する際に用いられるサーヴェイ・マップの基礎となる認知地図の形成に個人差があることが原因と考えられる.