抄録
結晶塑性・変形双晶の構成モデルを構築する. 具体的には, 変形勾配の弾塑性乗算分解に対して変形双晶の無応力ひずみに対応する変形勾配(双晶変形勾配)を乗算形式で導入し, 内部変数を用いる熱力学に基づく古典的定式化を採用する. この内部変数には, 各変形双晶パターンの存在率(すなわち, 体積分率)を選び, 双晶変形勾配はこれの連続関数として表現する. また, 自由エネルギーには, 通常の弾性および結晶すべりのひずみ硬化に関する項に加えて, 母相および変形双晶相の化学的エネルギーと双晶界面エネルギーをこの内部変数の関数として導入する. そして, この内部変数(変形双晶相の体積分率)がある閾値を超えた際に格子再配向が行われるものと仮定する. このようなモデル化により, 変形双晶を擬似的なすべり面における分解せん断応力によるのではなく, 熱力学的な駆動力による形成判定が可能となる. また, 双晶変形勾配の定義式において, 各双晶種別の無応力ひずみパターンは材料パラメータであり, 格子再配向の判定に必要な体積分率は各パターンの係数であるので, 変形双晶の構成モデルで考慮すべき前術の3点が同一の内部変数で関連づけられることなる. 加えて, 提案するモデルにおける変形勾配の乗算分解と自由エネルギーの定義において, 結晶すべりと変形双晶が関連づけられるため, それらの相互作用を適切に捉えることができるものと期待される.