日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
複合板の線形マルチスケール解析のための数値平板試験
寺田 賢二郎平山 紀夫山本 晃司松原 成志朗
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2015 年 2015 巻 p. 20150001

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抄録
今日のCAEにおける, このような均質化法に基づくマルチスケール解析手法の優位性は, 3次元的かつ周期的に分布する微視的非均質性を有する固体を対象とした理論が完備されていることを背景としている. しかし, 周期的な微視的非均質性が面的な広がりしか持たない構造物について, ミクロは3次元固体, マクロは2次元の板・シェル構造でモデル化するための理論は, 未だ有効でかつ実用的なマルチスケール解析手法を提供するには至っていない. 実際, 均質化法の数学理論は, 空間的に周期変動する係数を有する微分方程式の解の漸近挙動を記述するものであり, これを面内に周期的な非均質性を有する板(本研究では, 複合板と呼ぶ)に直接的に適用すると, その単位構造(ユニットセル)の代表寸法が無限小になるような極限を取ることになり, マクロ構造は(面外せん断変形を考慮しない)薄板理論の式しか導かれない. 複合板のミクロスケールには3次元固体の力学挙動を考慮し, マクロには面外せん断変形を許容する厚板理論を採用することは, 板の厚さをゼロに漸近させる数学的操作が適用できないことを意味し, 面内非均質性の周期単位についても実寸法を保持しなければならないことになる.
そこで本研究では, 数学的均質化法のように解の漸近展開形から出発した式展開や, 板厚や面内周期性の代表寸法をゼロに近づけるなどの数学的処理は行わず, ユニットセルを``数値供試体''とみたてて3次元固体としてモデル化し, 等価な均質体の板剛性を算出できるような変位場とその境界条件式を提示する. そして, この変位場から導出され, 平衡状態にあるユニットセル内で分布するミクロひずみや応力と, 厚板としてモデル化されたマクロ板構造の一般化合応力とひずみ・曲率とを, 力学的に整合性を保つように関係づけたうえで, 非均質な材料分布を有するユニットセルのミクロ境界値問題と, 等価な厚板のマクロ境界値問題を個別に設定し, マルチスケール境界値問題を定義する. このうち, ミクロ境界値問題を解くことでマクロ板剛性を算定することを一般に均質化解析と呼ぶが, 本研究ではこれを「数値平板試験」と呼び, FEMによる具体的な方法を提示する.
数値計算例では, 均質な板と積層板について, 提案手法で求めた板剛性と理論解とを比較して手法の妥当性を確認した後に, 面内に周期的な非均質を有する複合板に対して, マルチスケール解析(数値平板試験=均質化解析, マクロ解析, 局所化解析)を行い, 手法の有用性を例示する.
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© 2015 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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