日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
津波避難ビルの損傷評価のための有限要素解析手法の構築
田中 聖三磯部 大吾郎
著者情報
ジャーナル フリー
J-STAGE Data

2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182008

詳細
抄録
地震発生時に励起される可能性のある津波災害は, 沿岸域に多大な人的・物的被害が引き起こされることは記憶に新しい. 津波発生時に沿岸域でとるべき行動は, 原則として高台へ避難することであるが, 高台から遠く離れた平地部においては, 津波避難ビルを建設することで対応がなされている. この津波避難ビルは, 津波波力に対して十分な堅牢性を有し, 想定しうる様々な津波波力に対し設計時に十分検討されている必要がある. これらの多数の津波シナリオを取り扱う検討方法として, 数値解析による検討方法は, 有効な手法であるといえる. 十分な堅牢性を評価するためには, 建物の部材の終局状態における損傷を検討しなければならず, そのためには, 部材細部に作用する局所的な波力も考慮しなければならない. 合わせて, 建物の詳細な形状を表現する必要があり, これらの要求を満足する津波伝播解析に必要なモデルの自由度は多大なものとなる. これらの大規模問題に対して, 大規模並列計算機を用いて解析を行うことが可能となってきているが, 設計時には部材寸法の変更などによる構造部材の形状変化があり, その度に津波入力の全てのケースを再計算して波力を推定することは, やはり計算コストを莫大なものとしてしまう.
そこで本研究では, 津波避難ビルの設計時における損傷評価のための有限要素解析手法を構築することを目的とする. まず, 津波波力を表す方法として, 構造物の形状を詳細に表現し, これらに作用する波力を高精度に評価することが可能な解析手法の構築を行った. 時々刻々の自由表面流れを解析するために, 安定化有限要素法に基づくVolume of Fluid (VOF)法を実装した. 数値解析例として, 津波避難ビルに対する津波伝播解析を取り上げ, 津波避難ビルの形状による波力の変化について検討を行った. また, 津波避難ビルの形状による抗力係数の変化についても検討を行い, 設計時に用いる津波波力の推定式の有効性を検討した. また, 構造物の損傷評価を行うための方法として, ASI-Gauss法に基づく骨組構造解析手法に対して先の津波波力を入力とする1方向連成解析手法を構築し, 津波避難ビルの損傷評価を行った.
著者関連情報
© 2018 The Japan Society For Computational Engineering and Science
前の記事 次の記事
feedback
Top