逆断層においては, 地震動のみではなく地表面が大きく変位することによっても被害が発生する。
例えば, 集集地震 (1999年, 台湾) などにおいて逆断層のずれによる地表面の変位により多くの構造物が致命的な損害を受けた。
一方, 地質学分野等の研究者らによって基盤断層の研究が発展し, 基盤断層の位置や形態・活動確率・予測される基盤変位量などの多くの情報が得られるようになってきた。
それにより, 既設の社会基盤構造物の付近に活断層が存在することが指摘され, 構造物の被害の予測や対策手法の開発が求められている。
しかしながら, 基盤断層が大きく変位した場合の上部の表層地盤の変形挙動や盛土などの土構造物の変形挙動については, 拘束圧に大きく依存することや数mオーダーの強制変位により変形の局所化領域あるいは不連続面が発達・分岐すること, 土質により異なる挙動を示すこと等により, 未だ明確に理解されていない部分も多い。
特に, 逆断層上部の土構造物の変形挙動は, 表層地盤の材料特性や境界条件を含む構造特性あるいは断層の形態・角度・規模など多くの要因に支配されるが, それぞれの要因についての違い等について不明な点が多い。逆断層変位による被害を低減するための対策工法の開発が必要であるが, これらを検討するための手法の確立と表層地盤や地表面変位の変形挙動に関する知見の蓄積が重要となる。
本研究では, まず, 層厚が厚く拘束圧が大きい部分も想定可能な, 遠心載荷模型実験装置を開発し, 乾燥した硅砂4号を使用した簡単な逆断層実験を行う。
次に, 基盤逆断層の上部にある表層地盤を対象に, 2次元粒状要素法を用いた逆断層シミュレータを開発し, 解析の結果を遠心載荷模型実験と比較する。
さらに, 各解析パラメータの表層地盤の変形挙動に与える影響や解析の結果得られる粒状体内部の情報について示す。
最後に, 対策手法を考える上で参考となる柔らかい層を意図的に設置した簡単な解析について示す。
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