2021 年 2021 巻 1 号 p. 20211001
既設コンクリート構造物の安全性を的確に評価するためには,目視で得られる表面の情報のみならず,コンクリート内部のひび割れの位置,サイズ等の詳細情報を把握することが望まれる.本研究は,電磁波レーダ法およびGANの応用技術の一種であるpix2pixを利用した,コンクリート構造内部のひび割れ可視化手法の確立に向けた基礎的な検討を行ったものである.具体的には,まず,人工欠陥の位置・寸法を変化させて埋め込んだコンクリート供試体を対象に電磁波レーダ試験を行った.同実験により,学習データを取得した後,そのデータセットを学習して得られたネットワークモデルのひび割れの識別・可視化精度の検証を行った.さらに,本研究では,FDTD法によって実験を再現し,シミュレーションにより生成した学習データセットの利用の可能性についても検証した.検証の結果,提案手法は,人工欠陥の位置・寸法を概ね推定することができることが分かった.また,FDTDを用いたシミュレーションは,有意な学習データを大量に生成できる可能性があるものの,現状ではアンテナのモデル化および非均質性のモデル化に課題があることが分かった.