子どもの貧困が学力や自己肯定感に及ぼす影響は大規模調査から明らかにされてきた.また,貧困は自己肯定感を含む心理的発達全般にも影響を及ぼすことが指摘されてきたが,それらの学力との関連はまだ十分に明らかにされていない.
そこで本論文では,A市データの二次分析から,経済的課題を抱える世帯として就学援助受給世帯と児童扶養手当受給世帯に着目し,受給なし世帯と比べ,子どもの心理的発達・学力における差とそれらの関連を探った.
その結果,受給世帯において,教科偏差値は小1~中2,心理的発達は小3~6において不利な状況にあることが明らかになった.また,就学援助受給世帯の子どもは周囲との関係性で,ひとり親世帯の子どもは自己肯定感に関わる部分で困難を生じやすく,それが学力に影響する可能性が示唆された.これらの結果に基づき,今後,心理的発達や生活習慣の学力にもたらす影響について,多変量解析をすすめていく必要がある.