日本臨床免疫学会会誌
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総説
抗β2-グリコプロテインI抗体の抗リン脂質抗体症候群における病原性
保田 晋助
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2004 年 27 巻 6 号 p. 373-378

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抄録

  抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome ; APS)は,抗リン脂質抗体(Antiphospholipid antibodies ; aPL)が検出され,動静脈血栓症または妊娠合併症を生ずる疾患である.aPL の対応抗原として,β2-グリコプロテインI(β2-GPI)やプロトロンビンが挙げられ,特に抗β2-GPI抗体は病原性を有する自己抗体として研究されてきた.抗β2-GPI抗体が血栓症を引き起こす機序としては,1)自己抗体の存在によりβ2-GPIの陰性荷電リン脂質への結合性が高まり,β2-GPIのもつプロテインCに対する抑制作用が強調されること,2)β2-GPI-LDL複合体の内皮下マクロファージによる取り込みを促進し,動脈硬化を進展させること,3)血小板のApo-Eレセプターへの結合を介して血小板の粘着能を上昇させること4)内皮細胞や単球表面に結合し,p38 MAPキナーゼの系を介して組織因子を発現,局所を過凝固に導くことなどが報告されている.また,習慣流産の機序としては,胎盤梗塞のみならず補体系の活性化が報告された.これらの病態の解明が,新しい治療に繋がることが期待される.

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© 2004 日本臨床免疫学会
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