日本臨床免疫学会会誌
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27 巻, 6 号
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総説
  • 岡崎 仁昭, 長嶋 孝夫, 簑田 清次
    2004 年 27 巻 6 号 p. 357-360
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      スタチン系薬物は高脂血症治療薬として現在,国内外で広く使用されている.
      近年のスタチン系薬物を使用した大規模臨床試験によると,虚血性心疾患の初発と再発とを予防することが示されている.この動脈硬化性病変への効果は,必ずしもコレステロール低下作用だけに基づくものではないことが最近の研究成果から明らかとなってきた.すなわちスタチンは血清コレステロール低下作用以外にも多面的効果(pleiotropic effect)を有し,例えば,抗酸化作用,血管内皮細胞の分化増殖の促進とその機能障害の改善,血栓形成改善作用,抗炎症作用など直接的に冠動脈イベントなどの動脈硬化を抑制することが示されている.さらに,最近になってスタチンの多面的効果の一つとして,免疫抑制(調整)作用を示す報告が相次いでなされ,注目を浴びている.本稿ではスタチンの免疫系への作用について文献的考察を含めて概説し,最後に我々の研究結果の一部を紹介する.
  • 高田 英俊, 野村 明彦, 原 寿郎
    2004 年 27 巻 6 号 p. 361-366
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      Hyperimmunoglobulin-E syndrome is one of the primary immunodeficiency with the manifestations of recurrent infections especially with Staphylococcus aureus, characteristic facies, hyperextensibility of joints, multiple bone fractures, scoliosis, and delayed shedding of the primary teeth. It is a multisystem disease of autosomal dominant inheritance. Recently, a new type of hyper-IgE syndrome with autosomal recessive inheritance was identified. Although Th1/Th2 imbalance has been suspected to be a cause of this diesease, it is not clarified yet.
  • 水野 由美
    2004 年 27 巻 6 号 p. 367-372
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      サルモネラは細胞内寄生性のグラム陰性桿菌であり,その感染防御には上皮細胞,好中球,マクロファージ,樹上細胞などが関与する抗原非特異的な自然免疫と抗原特異的T細胞,B細胞が関与する抗原特異的な獲得免疫に大きくわけられ,その間にNK細胞,NKT細胞,γδ T細胞などが関与する早期誘導反応がある.サルモネラに感染し増殖したマクロファージ,樹状細胞は多くのサイトカインを産生する.そのサイトカインの中でもIL-12, IL-15, IL-18はNK細胞,NKT細胞,γδ T細胞の誘導,IFN-γによる早期の病原体の排除に重要であり,IL-12およびIL-18は樹状細胞による抗原提示に反応したTh1細胞をはじめとする獲得免疫の誘導に重要な役割を果たす.
  • 保田 晋助
    2004 年 27 巻 6 号 p. 373-378
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome ; APS)は,抗リン脂質抗体(Antiphospholipid antibodies ; aPL)が検出され,動静脈血栓症または妊娠合併症を生ずる疾患である.aPL の対応抗原として,β2-グリコプロテインI(β2-GPI)やプロトロンビンが挙げられ,特に抗β2-GPI抗体は病原性を有する自己抗体として研究されてきた.抗β2-GPI抗体が血栓症を引き起こす機序としては,1)自己抗体の存在によりβ2-GPIの陰性荷電リン脂質への結合性が高まり,β2-GPIのもつプロテインCに対する抑制作用が強調されること,2)β2-GPI-LDL複合体の内皮下マクロファージによる取り込みを促進し,動脈硬化を進展させること,3)血小板のApo-Eレセプターへの結合を介して血小板の粘着能を上昇させること4)内皮細胞や単球表面に結合し,p38 MAPキナーゼの系を介して組織因子を発現,局所を過凝固に導くことなどが報告されている.また,習慣流産の機序としては,胎盤梗塞のみならず補体系の活性化が報告された.これらの病態の解明が,新しい治療に繋がることが期待される.
  • 針谷 正祥
    2004 年 27 巻 6 号 p. 379-388
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      CD40およびCD154はそれぞれTNF受容体スーパーファミリー,TNFスーパーファミリーに属する分子であり,多くの研究結果が自己免疫疾患の病態形成におけるCD40-CD154相互作用の重要性を示している.CD154は主に活性化T細胞に発現し,B細胞のみならず幅広い細胞に発現するCD40と結合して,自己免疫疾患における抗原提示・トレランス・抗体産生・組織障害などに関与する可能性が示されている.膠原病の中では,特に全身性エリテマトーデス(SLE)あるいは関節リウマチ(RA)におけるCD40-CD154相互作用の研究が最も精力的に進められてきた.本稿では,SLE, RA,炎症性筋疾患,強皮症,抗リン脂質抗体症候群の病態形成におけるCD40-CD154相互作用の関与について基礎・臨床の両面からこれまでの報告を俯瞰すると共に,CD40-CD154阻害療法の臨床試験結果についても取り上げた.モデル動物でのCD40-CD154阻害療法は優れた治療効果を示し,新薬開発の標的分子として注目を集めている.しかし,現時点では有効性と安全性を両立するCD40-CD154阻害薬はいまだ開発されておらず,今後の研究の進展が強く期待される.
  • 武田 誠司
    2004 年 27 巻 6 号 p. 389-396
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      以前より,膠原病と悪性腫瘍の合併は注目を集めており,特に皮膚筋炎では高率に悪性腫瘍の合併を認めるとされている.
      近年,全身性強皮症(SSc)においても,有意差をもって悪性腫瘍の合併を認める報告があり,今回,SScと悪性腫瘍に関して,文献的考察を行った.
      その結果,次の①~④に代表されるような特徴を認識出来た.
      ①高齢発症,重症(Barnett分類III型以上),男性のSSc症例は,悪性腫瘍の合併について特に検討を要する.
      ②悪性腫瘍が合併する機序は,肺線維症を基盤として肺癌が発症する例にみられるSScの基本病態が悪性腫瘍を惹起する機序,悪性腫瘍によりSSc様症状が引き起こされるparaneoplastic syndromeとしての機序,およびSScによる免疫能の低下により悪性腫瘍が発症する機序が挙げられる.
      ③SScと乳癌の発症間隔は,SScに合併する他の悪性腫瘍と比較して著しく短い.
      ④SScでは,長期にわたる逆流性食道炎の結果,下部食道の扁平上皮が脱落し,円柱上皮化生をきたすことがある(Barrett食道).この場合,食道腺癌を合併することが多い.
原著
  • 青木 昭子, 桐野 洋平, 石ヶ坪 良明, 瀬沼 昭子, 長岡 章平
    2004 年 27 巻 6 号 p. 397-401
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      【目的】 原発性シェーグレン症候群(SS)の腺外症状としての肝障害を検討する.【対象と方法】 155例(女150男5).血清AST, ALT, ALP, γ-GTPのいずれかが1ヵ月以上高値を持続または外来で3回以上高値を示した場合肝障害とした.黄疸,腹水,掻痒感などの自覚症状,脾腫,食道静脈瘤などの所見を有する場合症候性肝障害と判断した.【結果】 20例(13%)が肝障害を呈したが,症候性は3例(2%)のみであった.原因はPBC 6例,自己免疫性肝炎(AIH)2例,HCVとAIH合併1例,脂肪肝1例,不明8例であった.AIHとC型肝炎合併1例で肝がんを合併した.肝障害合併群では有意に皮膚病変,神経病変の合併率が高値であった.肝障害合併群では抗核抗体,リウマトイド因子,抗セントロメア抗体陽性例が有意に高率であった.【結語】 SSでは症候性の肝障害を合併することは稀であるが,肝酵素を定期的に調べて肝障害を早期発見することが必要であると考えた.
  • 坂内 文男, 森 満, 石川 治, 遠藤 秀治
    2004 年 27 巻 6 号 p. 402-406
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      強皮症と悪性腫瘍の関連については議論されているが,合併頻度や合併する悪性腫瘍の種類については明確な結論は得られていない.今回我々は,8,327例の臨床調査個人票を解析し,強皮症における悪性腫瘍の合併頻度と,合併例の臨床検査成績の特色を検討した.その結果,症例全体では3.1%に悪性腫瘍の合併がみられた.男女別の比較では,男性に悪性腫瘍が合併する割合が有意に高かった(P<0.01).悪性腫瘍合併例の平均年齢は,全体では64.3歳であり,非合併例の58.3歳よりも高かった(P<0.01).また,一般人口集団での悪性腫瘍例の割合を基準にして,解析対象となった強皮症患者において期待される悪性腫瘍症例数を算出し,実際の悪性腫瘍総数との比(O/E比)を求めた.その結果,一般人口集団と比較した場合,強皮症では男性で2.31倍,女性で1.64倍悪性腫瘍の合併頻度が高いことが示された.臨床検査所見で悪性腫瘍合併と有意な関連がみられた項目は,「抗核抗体陰性」(P<0.01),「%DLcoが70%以下」(P=0.03)の二項目であった.これらを性,年齢を調整して,ロジスティク回帰分析で検討した.その結果,「抗核抗体陰性」は有意な関連がみられなくなり,「%DLcoが70%以下」のみが有意な関連要因として残った(P=0.032).すなわち,合併する症例の特色として拡散能の低下が示され,悪性腫瘍合併と何らかの関連を持つことが示唆された.
症例報告
  • 大橋 広和, 高橋 裕樹, 小原 美琴子, 鈴木 知佐子, 山本 元久, 山本 博幸, 牧口 祐介, 玉川 光春, 嵯峨 賢次, 村上 理絵 ...
    2004 年 27 巻 6 号 p. 407-413
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      症例は40歳,女性.1995年5月頃より下腿浮腫が出現し膜性腎症によるネフローゼ症候群と診断,ステロイド大量投与により不全寛解を得た.また,同時期に頭部から四肢に拡大する角化性紅斑を認めた.1996年当院皮膚科にて毛孔性紅色粃糠疹(以下PRP)と診断されたが,治療抵抗性であった.1999年7月手指関節炎が出現,2000年4月に再び蛋白尿が出現し,同年8月当科入院となった.入院時,両手指遠位指節間(以下DIP)関節と右第4指近位指節間(以下PIP)関節に著明な腫脹を認めた.抗核抗体,リウマトイド因子,HLA-B27は陰性.関節X線上DIP・PIP関節の破壊を認め,関節MRIにて滑膜炎が確認された.加えて骨シンチグラフィーでは両中足趾節関節と左仙腸関節に集積をみた.関節症の特徴が乾癬性関節炎に類似しており,乾癬と同様皮膚の異常角化を主徴とするPRPに伴う関節炎と診断した.膜性腎症に対してステロイド大量投与を施行後,いったん関節症状は改善したが,手指関節の破壊は急速に進行した.2002年4月よりシクロスポリンAを併用し,関節炎の消退傾向を認めている.PRPに合併する関節症の報告例は少なく,その病態解析には今後の症例の蓄積が必要である.
  • 八子 徹, 西成田 真
    2004 年 27 巻 6 号 p. 414-419
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      36歳男性.平成8年多関節痛と手・足に皮疹及び多発性の皮膚潰瘍が出現,炎症所見の上昇もみられ同9年当科入院.抗核抗体は陰性であった.皮膚生検により血管炎と診断.胸部CT上両側肺背側に,線状のBOOP様陰影を認めた.気管支鏡下肺胞生検(TBLB)にて気管支壁と末梢肺胞に炎症性細胞浸潤が認められた.気管支肺胞洗浄(BAL)液には好酸球は認めず.胸腔鏡下肺生検(VATS)にて終末細気管支レベルに典型的なorganizing fibroblastic polypがみられ,それによる気道閉塞像(bronchiolitis obliterans)を認め器質化肺炎の所見であった.以上よりBOOPと診断.ステロイド剤投与により軽快し,退院.平成12年8月末より乾性咳嗽,発熱,呼吸困難が出現し当科入院.著明な低酸素血症を認め,LDH 377 IU/ml, CRP 8.27 mg/dlと上昇,胸部CTで両肺下葉を中心としたBOOP像の増悪を認めた.ステロイドパルス療法を施行後,PSL60 mg/日の内服を開始し,症状・所見共に著明な改善をみた.血管炎に肺病変としてBOOPを合併する例は稀であり,両疾患の病態を考える上で示唆に富む症例と考え報告する.
  • 尾本 篤志, 川人 豊, 村口 尚子, 鷹尾 俊達, 山本 相浩, 木村 瑞穂, 坪内 康則, 井上 衛, 吉川 敏一
    2004 年 27 巻 6 号 p. 420-426
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      症例は73歳,女性.1999年にアレルギー性鼻炎,気管支喘息が発症し,2002年4月には好酸球増多,発熱,多発性単神経炎が出現した.6月に急性心筋梗塞,7月に右腓骨神経麻痺発症し,神経生検の結果をふまえChurg-Strauss症候群(以下CSS)と診断した.メチルプレドニゾロンパルス療法,後療法としてプレドニゾロンの大量投与を開始し,好酸球は正常化し,上記症状は改善したが,経過中に上腸間膜動脈閉塞症を併発した.同症も保存的治療にて病状は改善するも,頚動脈カテーテル検査で両側の頚動脈の高度な狭窄を認めたため,シクロフォスファミドパルス療法を計6回施行し,アザチオプリンを追加投与した.その後血管合併症は見られていない.一般にCSSでは,主として小動脈,細動脈,毛細血管,細静脈が障害されるが,本症例のように大,中動脈領域に血管病変を来すことは稀である.高齢発症のCSS症例では,加齢による動脈硬化も伴い,従来より中枢側に病変が現れることが示唆され,興味深い症例と考え報告する.
  • 橋本 美季子, 吉藤 元, 三森 経世
    2004 年 27 巻 6 号 p. 427-430
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/22
    ジャーナル フリー
      56才女性.乳癌と卵巣癌を6年間の間隔を経て発症し,各々に関連して皮膚筋炎を合併した.51才時,乳癌切除の半年後,全身に定型的皮疹が出現し,筋電図上も筋炎の所見が得られたため,皮膚筋炎と診断された.皮疹はステロイド外用薬のみで2ヶ月程度で軽快し,以後再発なく経過していた.しかし6年後再び同様の皮疹,Gottron徴候,筋原性酵素の上昇がみられ,皮疹・皮膚生検所見と合わせて皮膚筋炎と診断した.悪性腫瘍に対する精査を行ったところ卵巣癌が発見され,腫瘍切除が行われた.腫瘍切除後,ステロイドの外用のみで皮膚症状・筋原性酵素ともに軽快し,また乳癌の再発所見もみられなかったため,卵巣癌に伴う皮膚筋炎と考えられた.2回とも悪性腫瘍診断の前後に皮膚筋炎を発症しており,また2回目は腫瘍切除後,皮膚筋炎症状の軽快をみたため,それぞれ腫瘍随伴症候群としての皮膚筋炎発症が強く示唆された.異なる臓器・組織型の悪性腫瘍にそれぞれ皮膚筋炎を合併した症例は検索した限りではみられず,稀な症例であるとともに,悪性腫瘍に伴う皮膚筋炎の発症機序について腫瘍の種類に関わらず起こる腫瘍随伴症候群と捉える上で,示唆に富む一例と考えられた.
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