抄録
全身性エリテマトーデス(SLE)では,近年の治療法の向上によって生命予後が改善し,今後は生活の質(QOL)の向上が一層要求される.しかしながら,関節リウマチに比し,QOL調査票の開発は未だ十分ではない.そこで項目数を比較的制限した独自のアンケート票を用いて54例の患者を対象に予備調査を行い,QOLを向上させるための精神心理的ケアについて検討した.病気の状況下で現在の健康状態をどの程度と考えているかを示す健康感,ならびに,受け入れ度,満足度はそれぞれ64%,87%,50%が良好と回答した.これらの項目は互いに相関を示し,健康感は疾患活動性,身体機能,社会環境ならびにうつ尺度,不安尺度を含む心の健康度と相関した.一方,受け入れ度は普段の仕事や学業を行うために必要な身体機能と家族や職場の理解に基づく社会環境に相関を示し,満足度はこれらすべての要因が総合的に関与していた.SLE患者の心理状態として,慢性疾患であることによって生じる職場や家庭・社会における立場の喪失感に由来するうつ状態や不安感の存在が推測され,これらを解消するためには患者のみならず家族や社会に対する啓蒙が重要と考えられた.本調査に対して患者の良好なコンプライアンスが得られたが,このQOL尺度の信頼性,妥当性ならびに各項目と下位尺度の関係についてさらに症例数を増やして検討する予定である.