日本臨床免疫学会会誌
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28 巻, 1 号
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総説
  • 岩本 雅弘
    2005 年 28 巻 1 号 p. 4-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/03
    ジャーナル フリー
      新生児ループスは母親の自己抗体(抗SS-A抗体,抗SS-B抗体,抗U1RNP抗体)が胎盤を介して,胎児および新生児に障害をあたえる後天性,受け身の自己免疫症候群である.主症状は心伝導障害,皮膚症状,肝機能障害,血液障害である.完全房室ブロックは不可逆的な障害であるが,心症状以外の症状は一過性,可逆的な障害で生後1年までに自然に治癒する.前向き研究の結果,抗SS-A抗体陽性の女性が妊娠した場合の完全房室ブロック児が産まれる頻度は約2%である.また,過去に新生児ループス児を出産した女性が再度新生児ループス児を出産する確率は心ブロック児で10.5%,皮膚新生児ループス児で26%である.
  • 小川 法良, 下山 久美子, 河南 崇典
    2005 年 28 巻 1 号 p. 10-20
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/03
    ジャーナル フリー
      シェーグレン症候群(SS)唾液腺において産生されるサイトカインでは浸潤リンパ球由来のIFNγが重要であると考えられ,class II MHC, Fas, CD40など様々な機能分子を上皮細胞に発現誘導する.一部の患者ではIFNγの過剰産生の理由として上皮細胞から産生されるTGFβの産生減少が関与していることが示唆された.またSS唾液腺において産生される主なT細胞遊走性ケモカインはIFNγにより唾液腺上皮細胞に誘導されるIP-10(CXCL10),Mig(CXCL9),I-TAC(CXCL11)であった.SS唾液腺においては上皮細胞がFasを発現し,浸潤リンパ球の一部がFasLを発現している.SS唾液腺培養上皮細胞はIFNγ刺激によりFas発現が増大するが,この状態で抗Fas抗体を作用させても細胞死は誘導されなかった.同時に発現が増大するCD40に対する抗体を抗Fas抗体とともに添加すると効率的に細胞死が誘導された.この細胞死はアポトーシスであり,抗Fas中和抗体にて抑制されるため,主にFas経路を介するものであると考えられた.CD40からの刺激は恒常的に発現している細胞死抑制蛋白であるc-FLIP発現を抑制することにより,Fasの経路を促進していることが示唆された.
  • 安部 良
    2005 年 28 巻 1 号 p. 21-32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/03
    ジャーナル フリー
      T細胞は常に他の細胞との相互作用の中で免疫応答の誘導,制御を実行する.このコミュニケーションの際に伝えられる第一の情報は,T細胞レセプター(TCR)によってT細胞内に伝わる抗原特異性に関するものであり,そのシグナルをシグナル1と称する.その時,T細胞には抗原特異性のないシグナル,シグナル2が同時に伝えられ,このシグナルにより増殖,サイトカイン産生,機能分化,細胞死,不応答の獲得といったT細胞自身の運命が決定される.このシグナル2に関与する分子群を補助シグナル分子と総称する.現在までに数多くのT細胞上の補助シグナルレセプターが同定されており抗原提示細胞などに発現されているそれぞれに特異的なリガンドとの結合によりT細胞への補助シグナルを伝達する.補助シグナルには機能的に刺激性補助シグナル(=co-stimulators)と抑制性補助シグナル(=co-inhibitor)に分けられ,それぞれTCRを介した抗原特異的なシグナルを正(増幅)と負(抑制)にコントロールする.本項では補助シグナルによるT細胞機能の制御機構と免疫病との関連,更には治療への応用についての現状を概説する.
原著
  • Mari MITSUI, Miwako YAMASHIRO, Tatsuo YAMAMOTO
    2005 年 28 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/03
    ジャーナル フリー
      Aim : The aim of the study was to describe the frequency of anti-phosphatidylserine-prothorombin antibody(aPS/PTAb) in patients with recurrent abortion and preeclampsia, and to study the relationship between the presence of aPS/PTAb and clinical finding. Eighty six cases of recurrent abortion and 82 cases of preeclampsia were studied. A aPS/PTAb was measured by an enzyme linked immunosorbent assay(ELISA).
      Results : In patients with recurrent abortion, 3 out of 86 cases(3.4%) were positive in IgG antibody measurements and 5 out of 86(5.8%) were positive in IgM antibody measurements. In patients with preeclampsia, 2 out of 82 cases(2.5%) were positive in IgG antibody measurements and 13 out of 82(16%) were positive in IgM antibody measurements. The positive rates of aPS/PTAb in severe hypertension-positive cases is greater than in hypertension-negative cases(p=0.045). The positive rates of aPS/PTAb is higher tendency with in severe type than in mild type(p=0.117). The positive rates of aPS/PTAb is higher tendency with proteinuria and/or hypertension than without proteinuria(p=0.098) or hypertension(p=0.096).
      Conclusion : We found that aPS/PTAb appears in some cases of patients with recurrent abortion and preeclampsia. Our data suggest that aPS/PTAb might be a risk factor in patients with recurrent abortion, and may relate to clinical finding in preeclampsia.
  • 船内 正憲, 玉置 千勢, 山形 俊昭, 野崎 祐史, 生駒 真也, 杉山 昌史, 木下 浩二, 小山 敦子, 金丸 昭久
    2005 年 28 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/03/03
    ジャーナル フリー
      全身性エリテマトーデス(SLE)では,近年の治療法の向上によって生命予後が改善し,今後は生活の質(QOL)の向上が一層要求される.しかしながら,関節リウマチに比し,QOL調査票の開発は未だ十分ではない.そこで項目数を比較的制限した独自のアンケート票を用いて54例の患者を対象に予備調査を行い,QOLを向上させるための精神心理的ケアについて検討した.病気の状況下で現在の健康状態をどの程度と考えているかを示す健康感,ならびに,受け入れ度,満足度はそれぞれ64%,87%,50%が良好と回答した.これらの項目は互いに相関を示し,健康感は疾患活動性,身体機能,社会環境ならびにうつ尺度,不安尺度を含む心の健康度と相関した.一方,受け入れ度は普段の仕事や学業を行うために必要な身体機能と家族や職場の理解に基づく社会環境に相関を示し,満足度はこれらすべての要因が総合的に関与していた.SLE患者の心理状態として,慢性疾患であることによって生じる職場や家庭・社会における立場の喪失感に由来するうつ状態や不安感の存在が推測され,これらを解消するためには患者のみならず家族や社会に対する啓蒙が重要と考えられた.本調査に対して患者の良好なコンプライアンスが得られたが,このQOL尺度の信頼性,妥当性ならびに各項目と下位尺度の関係についてさらに症例数を増やして検討する予定である.
症例報告
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