抄録
症例は69歳男性.発熱,紅斑,有痛性の多発性口腔咽頭潰瘍で発症し,経過中に回盲部潰瘍を認め,腸管Behçet病が疑われた.その後,汎血球減少,骨髄芽球の増加を認め,第8トリソミー陽性の骨髄異形成症候群(MDS, RAEB-t)と診断された.一連の経過から,腸管Behçet病とMDSの合併が最も考えられたが,Sweet病や単純性潰瘍とMDSの合併,あるいはMDSの免疫不全による回盲部膿瘍などとの鑑別に苦慮した.腸管Behçet病とMDSの合併は本邦を中心に報告例が散見されるが,諸外国での報告例は極めて少ない.また,これら症例の大多数が第8染色体のトリソミーを保有していることから,第8トリソミーと腸管病変の関連が示唆されるが,詳細は不明である.同様の症例を集積,検討することで少なくとも一部の腸管Behçet病の病因の解明につながると期待される.さらに,本症例は,経過中高度の腰痛を認め,仙腸関節炎の合併が確認された.腸管Behçet病とMDSの合併例で仙腸関節炎合併の報告例はこれまでにはなく報告した.