抄録
原発性胆汁性肝硬変は,小葉間胆管が選択的に障害される原因不明の疾患であるが,ミトコンドリア抗体が90%以上の症例に疾患特異的に出現することから,ミトコンドリア抗原を標的とした自己免疫性疾患と考えられている.しかし,核膜孔蛋白であるgp210に対しても約20-30%の症例で,疾患特異的に自己抗体が出現する.本総説では,①ミトコンドリアの主な抗原エピトープであるPDC-E2 163-176に対する自己反応性T細胞が,gp210蛋白由来のペプチドと交差反応すること,②抗gp210抗体価が高値で持続している原発性胆汁性肝硬変患者は,肝不全へ進行するリスクが高いことを示し,intermolecular eitope spreadingの病態形成における役割とgp210蛋白の胆管障害の標的抗原としての可能性について解説する.