抄録
当科で経験した全身性エリテマトーデス(SLE)の男子3例について経過をまとめた.発症時年齢は12~14歳.シェーグレン症候群(SS)合併が2例,SSおよび抗リン脂質抗体症候群(APS)合併が1例で,治療前の腎組織所見は,3例とも進行型のWHO分類IV型であった.初期治療としてメチルプレドニゾロン(mPSL)パルスおよびシクロフォスファミド(IVCY)パルス併用療法(NIH推奨法,1年コース)を行い,維持療法としてプレドニゾロン(PSL)とアザチオプリン(AZA)を併用した.1例は併用療法終了3ヶ月後に再燃しmPSLパルスやシクロスポリン(CsA)の導入を行ったが,他の2例では約2.5年間再燃なく,抗核抗体以外の各種自己抗体は陰性化し低用量のPSL(5 mg/日)とAZA(50 mg/日)で寛解維持が可能となった.mPSLパルス・IVCYパルス併用療法後の腎組織所見は,再燃のなかった2例でWHO分類I, III型と改善し,再燃を起こした1例はWHO分類IV型であったものの,初診時に比較しメサンギウム細胞の増生や基質の増加の改善を認めた.すなわちmPSLパルス・IVCYパルス併用療法にて全例で腎の組織所見は改善し,2例では低用量のPSLと免疫抑制薬の併用で再燃なく寛解維持が可能となった.予後不良のリスク因子である男児において,また他の併発症(SS, APS)をもつSLEにおいても,病初期からmPSLパルス・IVCYパルス併用療法による積極的な治療を選択することで予後が改善される可能性が示唆された.