日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
肥大型心筋症を合併した全身性エリテマトーデスの一例
小谷 卓矢武内 徹阪本 倫代川崎 善子平野 すずえ田伏 洋子鍵谷 真希槇野 茂樹寺崎 文生花房 俊昭
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2005 年 28 巻 6 号 p. 413-417

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抄録

  患者は37歳女性.1991年に腎炎を伴う全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された.prednisolone(以下PSL),cyclophosphamide,mizoribineの併用にて加療され,蛋白尿が持続したが病勢は安定していた.2002年6月より労作時胸痛が出現し入院となった.胸骨左縁第2肋間に収縮期雑音を聴取した.検査所見では蛋白尿と貧血を認めたが,抗ds-DNA抗体を含め自己抗体は陰性で,補体の低下も認めなかった.BNPは651 pg/mlと高値であった.胸部X線は異常なし.心電図ではstrain patternを伴う左室高電位を呈した.心エコーでは,非対称性中隔肥厚および心尖部の著明な肥厚を認めたが,左室流出路狭窄はみられなかった.心筋生検では心筋細胞の錯綜配列と肥大を認め,肥大型心筋症(HCM)に合致した所見であったが,炎症細胞の浸潤や血管炎などSLEを示唆する所見は認めなかった.β遮断薬の追加投与のみで症状は消失した.SLEのHCM合併はこれまでに7例報告6)~9)されているが,心筋生検が記載されているものはない.本症例は心筋生検を施行しえた初めてのSLEとHCMの合併例の報告である.これまでの報告では,7例中6例でSLEとHCMの病勢や発症時期に関連性が認められず,本症例の経過,心筋病理所見を含めると,SLEとHCMの合併は偶然と考える方が妥当と推察する.

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© 2005 日本臨床免疫学会
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