日本臨床免疫学会会誌
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原著
プロラクチンはIDO (Indoleamine 2,3-dioxygenase)の発現増強を介し妊娠維持に関与する
川口 里恵小澤 真帆太田 郁子鈴木(唐崎) 美喜早川 智山本 樹生田中 忠夫
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2005 年 28 巻 6 号 p. 407-412

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抄録
  トリプトファン代謝酵素であるindoleamine 2,3-dioxygenase (IDO)は,胎児抗原刺激により惹起されたT細胞の増殖を抑制することにより,妊娠維持に関与することが知られている.一方prolactin (PRL)は妊娠初期より漸増し,着床期から妊娠極初期にかけての妊娠現象への関与は報告されているが,妊娠中期以降の乳汁分泌以外の妊娠への影響は明らかでない.今回我々は,IDOの誘導因子であるinterferon-γ (IFN-γ)がPRLと細胞膜上のレセプター構造やシグナル伝達を共有することから,PRLのIDO発現への関与を検討した.承諾を得た12名の健常女性末梢血より単核球を分離し,フローサイトメトリー,RT-PCR法により,非妊娠時,妊娠前期,後期の血清PRL値に相当する濃度下におけるIDO発現の変化を蛋白,mRNAレベルで検討した.その結果,妊娠時の血清PRL値に相当するPRLの存在下で,単独ではIDOを有意に誘導しない生理的濃度のIFN-γ刺激により,IDOがPRLの濃度依存的に有意に誘導された.PRL単独では妊娠後期に相当する濃度でもIDO発現を誘導しなかった.PRLは妊娠期間中,IDOを介して妊娠維持に寄与している可能性が示唆された.
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© 2005 日本臨床免疫学会
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