日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
総説 特集:From bedside to Bench―臨床が基礎医学・生物学に与えたインパクト―
抗IL-6受容体抗体療法—From Bedside to Bench—
西本 憲弘
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 29 巻 5 号 p. 289-294

詳細
抄録
  近年の免疫学は遺伝子工学や発生工学的手法を取り入れ,免疫システムの精巧なメカニズムを分子レベルで明らかにした.さらにゲノム情報を利用した疾患関連遺伝子の検索や病態解析が盛んに行われ,免疫疾患の病因遺伝子も同定されるようになった.今や,免疫学研究は臨床応用へと移り,自己免疫疾患の治療においても,モノクローナル抗体などの生物製剤を用いて特定の標的分子の機能のみを制御する分子標的治療法が可能になりつつある.しかし,多くの免疫難病の根本的な原因は未だ明らかではなく,解決すべき課題は多い.
  Interleukin-6 (IL-6)は,免疫・炎症反応,細胞の増殖・分化にかかわる細胞間情報伝達分子であり,IL-6の過剰は,キャッスルマン病や関節リウマチの病態形成にかかわっている.ヒト化抗IL-6受容体抗体,トシリズマブによるIL-6阻害は,これらの疾患の病態に基づいた新しい治療法となることがトランスレーショナルリサーチの中で明らかになった.同時にIL-6阻害治療のメカニズムを探ることで新たな治療のターゲットも見つかる可能性がある.
著者関連情報
© 2006 日本臨床免疫学会
次の記事
feedback
Top