抄録
関節リウマチ(RA)は多様性に富む疾患であるが,臨床現場で感じる疑問を研究室で解明し治療法に結び付けてゆくことで,多様なRA病態に対して適切な治療提供が可能となる.我々は,これまでにパルボウイルスB19 (B19)感染症例がRAへと進展していった例を数多く観察し,B19感染とRAとの関連を追及してきた.B19は持続感染様式を取り,この際の感染標的は免疫細胞である.免疫細胞へのB19感染はKu80を感染受容体として成立するものと推定される.RA症例の関節病変に浸潤する免疫細胞にはB19が高頻度に検出さるが,細胞内でB19は活性化され,ウイルス蛋白NS1の作用により炎症性サイトカインTNFαの産生亢進が誘導される.その結果,B19感染免疫細胞が存在する関節滑膜局所への好中球遊走,および活性化を促し,関節炎の惹起と同時に持続性関節炎に至る悪循環が形成され,RA病態の完成につながっていくものと考えられる.免疫細胞へのB19持続感染は宿主の抗B19中和能不全など抗B19液性免疫異常が関与している可能性がある.B19感染から進展するRAの治療にはNS1を標的とした治療が有効であると期待される.