抄録
NF-κB (nuclear factor kappa B)は,細胞外シグナルによって活性化される「誘導型」転写因子のひとつであり,その標的遺伝子は炎症免疫応答関連因子,アポトーシス抑制因子,細胞増殖促進因子,一部のウイルスおよびNF-κB自体の制御に関わる因子をコードするものである.そのため,関節リウマチ(RA)をはじめとする自己免疫疾患,がんや白血病などの悪性腫瘍,後天性免疫不全症候群(AIDS),など多彩な病態の発現と維持に関与する.他方,RAの治療薬として使われてきた薬剤の中にはNF-κB阻害活性の見つかった化合物もあり,RAとNF-κBとの間には,それと意識する以前から強い関連があると考えられる.ここでは,改めてRAの病態を整理し,NF-κBの関連する部分とそうでない部分をできるだけ明確にし,NF-κBを阻害することによって治療効果が得られると期待される病態と,そうでないものとを分けて考えることを試み,近い将来のNF-κBを分子標的とした新しい治療法の是非を論じる.