日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:創薬から見た免疫疾患の新たな治療ターゲット
p38 MAP Kinase 阻害薬
西川 昌孝名井 陽冨田 哲也高樋 康一郎南平 昭豪吉川 秀樹
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2007 年 30 巻 5 号 p. 390-397

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抄録
  p38 MAP KinaseはTNF-α, IL-1βなどの炎症性サイトカイン共通細胞内シグナル伝達分子であり,関節リウマチでの関節炎,骨関節破壊に重要な役割を担っていると考えられている.FR167653はp38 MAP Kinase選択的阻害薬であり炎症性細胞からのTNF-α, IL-1βの産生を阻害する.今回,関節リウマチの動物モデルであるCIAラットに対しFR167653を投与しその効果を検討した.CIAラット群では足関節の腫脹,関節破壊,関節周囲の破骨細胞数増加がみられたが,阻害薬投与群では予防投与群のみならず治療投与群においてもすべての点で著しい改善がみられた.また,血清中および組織中の炎症性サイトカイン濃度もCIAラット群と比較して著しく低下していた.骨髄細胞からのin vitro破骨細胞誘導実験においてもFR167653は破骨細胞分化を著しく抑制した.今回の実験モデルにおいてp38MAP Kinase阻害薬であるFR167653は複数の炎症性サイトカインの産生を抑制し,また破骨細胞分化抑制を介して骨関節破壊を直接抑制することがわかった.また骨髄リンパ球に対しても何らかの影響を及ぼしていることも示唆された.これらの結果は,関節リウマチにおいてp38 MAP Kinaseが重要な治療ターゲットになりうる可能性を示している.
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© 2007 日本臨床免疫学会
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