日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:創薬から見た免疫疾患の新たな治療ターゲット
関節リウマチとInterleukin-32
庄田 宏文藤尾 圭志山本 一彦
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2007 年 30 巻 5 号 p. 398-403

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抄録
  Interleukin-32 (IL-32)は2005年に報告されたヒトサイトカインである.IL-32は主にリンパ系組織に発現し,活性化したT細胞,NK細胞のみならず上皮系細胞においても分泌がみられる.IL-32の作用に関しては,in vitroにおいては細胞株,末梢血単核細胞に作用してTNF-αを誘導する.IL-32と炎症性関節炎との関連も報告されており,関節リウマチ滑膜組織におけるIL-32発現の強さは関節炎の程度と相関する.我々は,IL-32のin vivoでの作用を検討するため,IL-32β遺伝子をマウス骨髄細胞へ導入し同種骨髄移植を行うことでIL-32βが大量発現しているマウスを作成した.このマウスにおいて血清中TNF-α濃度の上昇,脾臓マクロファージにおけるTNF-α, IL-1β, IL-6の発現増強がみられた.このIL-32β大量発現マウスに対して,II型コラーゲン抗体により関節炎を誘導すると,コントロールと比較して重症の関節炎を発症した.またCD4陽性T細胞にレトロウイルスを用いてIL-32β遺伝子を導入し,II型コラーゲン誘発性関節炎の発症直前に移入すると,IL-32β導入CD4陽性T細胞の移入群で関節炎が有意に増悪した.またエタネルセプトを同時に投与することで,その増悪作用が減衰した.このことより炎症性関節炎においては,IL-32はマクロファージ系の細胞に作用し,TNF-αに代表される炎症性サイトカインを誘導することで関節炎の増悪に関与していると考えられた.このようにIL-32は関節炎の病態に深く関与しており,その阻害薬による関節炎治療の可能性が期待されている.
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© 2007 日本臨床免疫学会
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