抄録
混合性結合組織病(MCTD)は,全身性エリテマトデス(SLE),皮膚筋炎(DM),全身性強皮症(SSc)様所見の混在する疾患である.小児例は初期にDMやSSc様所見を呈することは少なくSLE様所見が中心になる.したがってMCTDの診断は,Raynaud現象と抗U1-RNP抗体の存在に重きを置くことになり,とくに抗dsDNA抗体及び抗U1-RNP抗体陽性の症例はSLEとの鑑別が困難になる.今回,小児期発症SLEまたはMCTDと診断された80例をdsDNA抗体と抗U1-RNP抗体の有無により,A群(抗dsDNA抗体陽性/抗U1-RNP抗体陰性)48例(60%),B群(抗dsDNA抗体陽性/抗U1-RNP抗体陽性)22例(27.5%),C群(抗dsDNA抗体陰性/抗U1-RNP抗体陽性)10例(12.5%)に分類し,B群の特徴を明らかにするため3群間の臨床症状や検査所見について比較検討した.その結果,低補体血症はSLEに近似していたが,高IgG血症はMCTDに近く,またRaynaud現象の頻度もMCTDに近似していた.一方,比較的MCTDに特徴的と思われる斑紋型抗核抗体やリウマトイド因子の出現頻度は,SLEとMCTDの中間的な位置にあった.すなわちB群症例は両疾患の特徴を併せ持ち,初発時の鑑別は困難であった.しかしRaynaud現象,高IgG血症,膜性腎炎,斑紋型抗核抗体,リウマトイド因子,抗U1-RNP抗体などMCTDに近似した所見を呈する症例は,MCTD予備軍としての経過観察や対応が必要と思われた.