日本臨床免疫学会会誌
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総説
多発性硬化症病変分子のネットワーク解析
佐藤 準一
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2010 年 33 巻 4 号 p. 182-188

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抄録
  多発性硬化症(multiple sclerosis ; MS)は,中枢神経系白質に炎症性脱髄巣が多発し,様々な神経症状が再発を繰り返す難病である.MSでは,自己反応性Th1細胞やTh17細胞が血液脳関門を通過して脳や脊髄に浸潤し,マクロファージやミクログリアを活性化して,脱髄を惹起する.炎症が遷延化すると軸索傷害を来して不可逆的機能障害が残存する.現在まで,髄鞘や軸索の再生に有効な治療薬は開発されていない.最近,MS脳病巣の網羅的プロテオーム解析データが報告された(Han MH et al. Nature 451 : 1076-1081, 2008).Hanらはステージを確認した病巣からlaser microdissectionで分離したサンプルを質量分析で解析して,4324種類のタンパク質を同定した.彼らは慢性活動性脱髄巣(chronic active plaque ; CAP)における血液凝固系の亢進を見出し,抗凝固薬を用いてMS動物モデル自己免疫性脳脊髄炎の治療に成功した.しかしながら,凝固系以外の多くのタンパク質に関しては,MS脳分子病態における意義は明らかではない.われわれは,Hanらのデータセットを分子ネットワーク解析ツールKEGG, PANTHER, IPA, KeyMolnetを用いて再解析し,MS脳病巣プロテオームの主要分子ネットワークを調べた.その結果,CAPにおけるextracellular matrix (ECM)-integrinネットワークの中心的役割を発見した.すなわちシステム生物学の観点からは,ECM-integrinシグナル伝達系は,MSにおける炎症性脱髄遷延化抑制のための創薬標的パスウェイとなる可能性がある.
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© 2010 日本臨床免疫学会
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