2005 年 31 巻 2 号 p. 284-287
表土シードバンクを植生基材の中に体積比10%混入して吹付けた切土のり面の施工後3年には,ヌルデ,カラスザンショウを主とする粗な低木林が成立し,その林床には風散布型の種類(アカマツ,ウリカエデ,リョウブ)と表土シードバンク起源と思われる種類(ヌルデ,アカメガシワ,ガマズミ,ソヨゴ)の多くの稚樹が生育しているのが確認された。現存している木本類の全本数のうち50.5%が施工後2年3カ月から3年の間に発生したものである。このことから,表土シードバンクを植生基材の中に混入して吹付けることによって粗な低木林が成立すると,植生の遷移が促進されるのではないかと考えられた。その結果,早期に周囲と近似した樹林が形成されることが示唆された。