日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
全身型単純ヘルペスウイルスII型感染症に髄膜炎および血球貪食症候群を併発した一新生児例
新井 千恵野澤 智原 拓磨菊地 雅子百村 芽衣木澤 敏毅田野島 玲大喜多 麻衣子横須賀 ともこ宮前 多佳子岩崎 志穂今川 智之横田 俊平
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2012 年 35 巻 1 号 p. 87-91

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抄録
  早期新生児期に全身型単純ヘルペスウイルス(HSV)II型感染症を発症し,髄膜炎,ウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)を併発した症例を経験した.症例は日齢14の男児.日齢7より無呼吸発作が出現し,活気の低下と易刺激性を認め,肝は腫大し,左上腕に水疱疹を認めた.定量的PCR法にて血漿,髄液,骨髄からHSV II型DNAが検出された.入院時血小板数の減少,低フィブリノゲン血症とフィブリン分解産物(FDP-E, D-dimer)の増加,PT/APTTの延長,高フェリチン血症,AST/LDHの著増,さらに骨髄にて活性化マクロファージによる血球貪食像を認め,HSVによるVAHSと診断した.HSV感染症に対して60 mg/kg/dアシクロビル(ACV),ビダラビン(Ara A)の投与,VAHSに対してパルミチン酸デキサメタゾン(Lipo-Dex)とシクロスポリンA (CyA)を併用し救命し得た.ACV長期投与にても血漿中のHSV-DNAの陰性化が得られず治療選択に苦慮した.新生児全身型HSV感染症ではVAHSに至ることも多く,抗ウイルス薬投与に加えVAHSに対する積極的な治療介入が重要であることが示唆された.
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© 2012 日本臨床免疫学会
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