日本臨床免疫学会会誌
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6学会合同特別シンポジウム
6学会合同特別シンポジウム1-1  自己免疫疾患の発症機序と抗原特異的制御
住田 孝之坪井 洋人飯塚 麻菜浅島 弘充近藤 裕也松本 功
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2012 年 35 巻 4 号 p. 265

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抄録

  関節リウマチ(RA)およびシェーグレン症候群(SS)は,血清中に自己抗体が存在すること,炎症局所に自己反応性T細胞が検出されることから「自己免疫疾患」と考えられている.RAおよびSSの発症機序を明らかにするために,臓器に浸潤した細胞について分子免疫学的解析により,以下の事実が明らかにされてきた.1)RAにおける関節滑膜およびSSの唾液腺にはCD4+T細胞が浸潤しており,多くはポリクローナルなT細胞だが,一部はクローナルに増殖したT細胞であった.2)少数のクローナルなT細胞が自己反応性T細胞として機能し炎症の引き金となっている可能性が推察された.3)RA滑膜局所におけるT細胞の対応自己抗原としてタイプIIコラーゲン(CII)やグルコース-6-リン酸イソメラーゼ(GPI)が明らかにされてきた.一方,SS唾液腺局所においては,ムスカリン作働性アセチルコリン受容体3(M3R)が自己抗原候補として脚光を浴びてきた.4)CII,GPI,M3RのT細胞エピトープおよびアナログペプチド(APL)が判明した.5)コラーゲン誘導関節炎(CIA),GPI誘導関節炎(GPI),M3R誘導唾液腺炎(MIS)において,APLにより自己免疫性関節炎および自己免疫性唾液腺炎の予防,治療効果が認められた.
  本シンポジウムにおいては,RAおよびSSを対象として,自己反応性T細胞,対応自己抗原,T細胞エピトープ,APLを紹介し,将来の自己免疫疾患に対する抗原特異的治療戦略について概説したい.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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