日本臨床免疫学会会誌
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6学会合同特別シンポジウム
6学会合同特別シンポジウム1-6  神経系のバリアーと神経免疫疾患
神田 隆
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2012 年 35 巻 4 号 p. 270

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抄録

  神経系はバリアーで守られている.中枢神経系には血液脳関門(BBB, blood-brain barrier)と血液脳脊髄液関門(BCSFB, blood-CSF barrier)が,末梢神経には血液神経関門(BNB, blood-nerve barrier)が存在し,神経系実質への免疫系のefferent armは常にめまぐるしく変化している血流成分からシャットアウトされている.現在では,神経系は決して“immunologically privileged site”ではなく,全身免疫系の到達し得ない場所ではないとするのが一般的な認識であるが,多発性硬化症やギラン・バレー症候群など,中枢神経系・末梢神経系の自己免疫疾患特有の発症メカニズムと治療戦略を考える上で,BBB・BNBに関する知識は極めて重要である.最近の分子細胞学的研究により,BBB・BNBの主座は微小血管内皮細胞にあること,BBBはペリサイトとアストロサイト,BNBはペリサイトからのコントロールを受けており,その分子的基盤の中心はclaudin-5,occludinの2種類の膜タンパクであることが明らかになった.BBB・BNBの破綻は単核球と液性因子の神経実質内流入という2つの独立した病的過程から成っており,その分子過程の制御は今後の神経免疫疾患治療に向けたターゲットの1つである.BBB・BNBの戦略的重要性について,最新の知見を交えて概説する.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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