日本臨床免疫学会会誌
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6学会合同特別シンポジウム
6学会合同特別シンポジウム1-7  抗精子抗体の対応抗原の役割
田中 宏幸
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2012 年 35 巻 4 号 p. 271

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抄録

  精子は女性にとって非自己抗原を含むので,抗精子抗体が誘導され女性生殖器官内で精子を傷害し不妊症を発症する場合がある.しかし不妊症の原因となる抗原の同定はほとんど行われていない.また,抗精子抗体が血中に検出されても不妊症を発症しないこともある.その原因として,精子を傷害する補体の活性化に差がある可能性が考えられる.事実,抗精子抗体検出法のなかで,補体依存性精子不動化(SIT)が,不妊症と相関が高い.最近,ヒト不妊症患者から樹立されたモノクローナル抗体H6-3C4が,mrt-CD52分子に結合し精子を強く傷害することが報告され,mrt-CD52が不妊症の原因抗原のひとつであることが示された.さらに精製mrt-CD52は補体系の古典的経路を阻害することから,本研究では,mrt-CD52の補体制御因子としての機能を検討した.その結果,mrt-CD52はC1qと直接結合することが示された.すなわち,女性にmrt-CD52分子に対する抗体が産生された場合,補体活性制御因子の抑制が起こり,補体活性化が過剰に誘導され精子の傷害に至ると考えられた.このような抗精子抗体が産生される機序については今後の重要な課題である.また,mrt-CD52は精子に特異的な糖鎖を有するGPIアンカー型糖ペプチド分子であることが報告されているので,mrt-CD52のC1q結合部位の詳細な検討結果もあわせて紹介する.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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